「9路盤が上達に最適な理由とはいったい何か?」について考察していきます。

 

9路盤が上達に最適な理由とは?

大海を知る

あなたは今、順調に上達していますか?

囲碁上達における道のりは時として厳しく、決して平坦なものではありません。

順風満帆に級位者のステージをクリアできるのは一部の才気あふれる若者であり、多くの囲碁ファンが「初段の壁」を超えられずに苦戦を強いられています。

なぜ、順序良く上達へのステップを踏めないのでしょうか?

その理由は難しくありません。

主な要因は以下の通りです。

・対局数が少ない

・変化が多くて覚えきれない

・目数の計算ができない

・死活の入り口と結果が結びつかない

結局のところ「上手く経験を積めていない」ことが上達できない原因でしょう。

これは19路盤で打っていることも無関係ではありません。

故・藤沢秀行先生は囲碁の神様が100を知っているなら、自分は6くらいだろうと仰っていました。

つまり後世に名を残す偉大な棋士でさえ「囲碁は難しい、分からない」と自覚しています。

「じゃあ、プロ棋士とアマチュアまたは高段者と級位者の違いは何なのさ?」という疑問が浮かび上がります。

答えは簡単です。

100のうちの6を「100」としたとき、どれくらい突き詰められるかといった話でしょう。

要するに神様の碁を知る必要はどこにもないのです。

人が対峙するのは同じく「人」ですから、人間の限界を突き詰めていくことが上達への確かな歩みとなります。

ここで重要なのは「囲碁を解き明かす」のではなく「人間を解き明かす」ことに他なりません。

囲碁に限らず、競技における性質は人間と密接に関わっています。

「いや、誰が相手でも関係ないよ」というのは間違いではありませんが、それでは一人相撲になってしまいます。

相手がいるからこそ「技を競う」すなわち「競技」として成り立つのです。

私が何を言いたいのか、まだ今一つ要領を得ないかもしれませんね。

競技の本質が「人」である以上、競う内容は一考の余地があります。

まさか「囲碁上達に将棋が良い」なんてことは言いませんよ。

しかし盤の大きさは見直す必要があるでしょう。

単純な話です。

プロ棋士、および高段者相手に級位者が9路盤で勝てますか?

勝てないでしょう、いくら何でも。

19路盤よりも勝つ確率は格段に上がりますが、それでも勝つまでは行かないでしょう。

19路盤の棋力と9路盤においての棋力はほぼイコールと言って差し支えありません。

いつだったか、三段の友達に「9路盤は暗記したもの勝ちでしょ?」と言われたことがあります。

うん、どっちでもいいよね。

そのときは「9路盤はそんな狭い世界じゃないよ」と返しておきましたが、たとえ暗記が大事だとしてもそれは19路盤にも言えることでしょう。

基本死活は覚えたほうがいいとか、基本定石は覚えたほうがいいとか、よく出てくる形は覚えたほうがいいのは誰もが理解しています。

19路盤の世界は広すぎるがゆえにある程度の基礎は身につけておかないと打ち進めるのが困難になります。

では9路盤の世界はどうなのか?

はっきり言って19路盤と大差ない「大同小異」の世界であることは間違いないでしょう。

19路盤を「宇宙(そら)」としたら、9路盤は「海」といったところでしょうか。

井の中の蛙大海を知らず、されど空の青さ(深さ)を知る

この言葉は多くの囲碁ファンに当てはまるのかもしれません。

9路盤の奥深さを知る由もなく、とはいえ19路盤の難しさを知っているとは皮肉なものです。

目の前に極めつくせない2つの世界があるにもかかわらず、見比べて一方を蔑むようでは上達はままなりません。

空を眺めるだけの蛙ではなく、まずは宇宙(そら)の青さを映した大海へ飛び込んでみましょう。

勉強と研究

9路盤の特徴は「布石がない」ことです。

囲碁において布石は極めつくすことのできない「聖域」であり、必勝法を見い出す術もありません。

そのため有段者になると布石をいい加減に打つ人が多くなっていきます。

「要は中盤のゴチャゴチャで勝負が決まるんだろ?」と言わんばかりですね。

この考え方の半分は正解と言ってよいでしょう。

さすがにめちゃくちゃ打つことはできませんが、良くも悪くも「いろいろある」わけですから丁寧に打っていれば問題ありません。

布石の研究は所詮「自己満足」の域を出ませんよ、プロ棋士はともかくとして。

流行り廃りがあるのがその証拠です。プロ棋士だってそこら辺はいい加減なものですよ。

「オレの良いと思う布石はこうだ!」と声高に叫ぶのは一部のトップ棋士だけですからね。

AIがトップになったら今度は「AIの研究」といって三々入りするのは、とても研究とは言えません。

つまり多くの棋士が「勉強」しているのであって、自ら「研究」しているわけではないのです。

逆に考えたら、布石の重要性はそれほど高いと評価しなくても良いでしょう。

かつての「木谷門下」が全盛だった時代とは訳が違います。

9路盤の良いところは「布石をとばせる」ため、対局時間の短縮と囲碁の要点を掴みやすくなります。

19路盤の指導碁でありがちなのは「ツケられると怖い」とか「怖くて切れません」といったセリフです。

「ツケからゴチャゴチャしてやられた」「勇気を出して切ったのに取られてしまった」という経験は誰しもあるのではないでしょうか?

これは13路盤になっても同じような主張を繰り返してきます。

確かに「ことなかれ主義」で上手くいくうちは喧嘩をしたくない気持ちになるのはよく分かります。

しかしそれではいつまで経っても切り結びからの「手筋」が生まれず、結果として上達が遠のいてしまうでしょう。

とはいえ19路盤において切り結びからの戦いの必然性を語るのは非常に難しいと言わざるを得ません。

なぜなら常に戦いと平穏は「大同小異」だからです。

「喧嘩したほうが上達しやすいから、どんどん切っていきましょう」と声をかけてもあまり相手に響きませんね。

「なぜ争わなくてはならないのか?」

この疑問を解消するためには狭いフィールドで確かな結果を示すしかありません。

9路盤の魅力はまさにこの点にあります。

手の良し悪しをアバウトな経験則ではなく、結果を見ることで判断することができるのです。

「そんなのは19路盤でも同じことじゃないの?」という声が聞こえてきそうですね。

あなたが仮に県代表クラスの打ち手だとしても、手の良し悪しを結果から判断するのは困難を極めます。

というか不可能です。

一局のうちいわゆる「評価値」の変動がどれくらいあるのか見当もつきません。

たとえAIを使おうが、良し悪しの意味までは教えてくれませんからね。

宇宙のかなたを直接見ることができないように19路盤における良し悪しは経験的に推測する他ないでしょう。

9路盤だからこそ、海の底を覗き込むことができるというものです。

級位者であれば碁の内容も浅瀬ですから、自ら確認するのも容易でしょう。

反省点が分かりやすいのは上達するうえで欠かせない「検討をしやすい」状況なのです。

検討を軽んじている人は上達の効率が著しく低下してしまいます。

上手に教えを乞うにしても「納得できない」なら自分のものにはなりませんし、また「疑問を持たない」のなら情報を鵜呑みにするだけのブロイラーに他なりません。

大切なのは「疑問を持つこと」そして「解決すること」です。

曖昧な理論ではなく結果に基づいた反省点を自分の力で見つけられるのが、9路盤における最大の効果と言ってよいでしょう。

19路盤を必死に「勉強する」のではなく、9路盤を楽しく「研究する」ほうが勝ることをあなた自身の学びで証明してみてください。

目算のすゝめ

9路盤にも「布石」と称すべきポイントはあります。

それは最初の4手です。

黒2手、白2手の組み合わせによってその後の進行が千差万別に変化していきます。

まずはこの組み合わせを固定して打ってみましょう。

「なぜ負けたのか?」を最初から検証するには特定の布石を用いるのが分かりやすく効果的なのです。

19路盤における四隅が向かい合っているとはいえ、空き隅の性質は何ら変わりありません。

星に打てば三々が弱点になり、三々に打てば中央の戦いには多少不利になります。

19路盤ではお互いに地にならない「マグサ場」も多いので、その点においても9路盤は「無駄がない」分だけ分かりやすいと言えるでしょう。

9路盤で真剣に勝つためには「目算」が欠かせません。

相手の石を無理やり取りに行こうとしても上手くいきませんし、中押しになるケースよりも整地まで行く展開のほうがはるかに多いのです。

この点も級位者の方には有り難いポイントではないでしょうか?

級位者同士の碁では滅多に「投げない」ですからね。

逆転を狙っているならまだしも「投げられない」といった人が数多くいます。

投了は敗者の権利だとしても、ただ漫然と打っているのは惰性以外の何ものでもありません。

お互いにとって時間の無駄となる行為ですが、自ら負けを認めるのは有段者の方でもなかなか決心がつかないものです。

負けているのに投げられないのは「目算ができていない」のも要因となっています。

9路盤で培われるのは何と言っても「終盤力」に他なりません。

ここが弱い、ものすごくいい加減なのがアマチュアの碁の特徴とも言えます。

ヨセ勝負に入って「ヒリつく」級位者の方がどれほどいますか?

とりあえず、終局へ向かって打ち進めようという気持ちだけでしょう。

目算が曖昧、もしくはできていないのは勝負において致命的な欠点だと自覚しなくてはいけません。

スポーツの試合でスコアボードを隠して競っているようなものですからね。

野球やサッカーならともかく、バスケやテニスでは途中経過が分からなくては駆け引きが成立しません。

級位者の多くが駆け引きをしていない、または大雑把であるのは疑いようのない事実でしょう。

そもそも目数計算は囲碁の基本であって、決してプロ棋士やトップアマの特殊能力ではありません。

9路盤という一見狭い範囲の中で戦うのは「数えやすい」ことが大きなメリットになります。

19路盤だと「数えましょう」と言っても「できません」と返されてしまいます。

しかし9路盤の終盤における目算をできない人は恐らく一人もいないでしょう。

5才以上の子どもなら数えられますよ、大人であれば間違いなくできます。

目算をするか、しないかというのは「上達したいかどうか」のやる気にも関わってきます。

もし「賭け碁」をするとして1目負けにつき1万円なら、絶対に数えるでしょう。

中押し負けを10万円とするなら、10目負け以上になっているかどうか必死に確認するはずです。

麻雀と違って囲碁は賭けませんから、目数に大した意味を見い出せないのかもしれません。

賭博を推奨するわけにはいかないので、そこは各自で工夫してみましょう。

1目負けにつき10円募金するとか、1目勝ちにつき100円お小遣いを増やしてもらうとかですね。

勝ち負けのラインを明確に意識し、それだけではなくどれくらい差が開いているのかを体感的に身につけることで、19路盤においても目算が楽になります。

目算ほどやらないと身に付かないものはありません。

早く上達したいのなら、以下の3つを意識的に取り組むと良いでしょう。

・布石を固定する

・石の切り結びから生じる変化を数多くこなす

・目算を欠かさずにやる

これらは19路盤でも十分通用する上達法ですが、何せ「やらない」から低迷しているのです。

布石は毎回気分で打っていませんか?

中盤の戦いを積極的に仕掛ける側に立っていますか?

具体的な数字を出しながら形勢判断をしていますか?

やればやるだけ経験値を積み上げてレベルアップを図れます。

やるかやらないかはあなた次第ですね。

とはいえ19路盤は広大な宇宙と同じですから、とてもアマチュアの手に負えるものではありません。

9路盤という名の深海こそ、囲碁の奥深さを探求するのにちょうどよいフィールドなのではないでしょうか。

私は9路盤が「至高の上達法」になり得るものだと信じています。

余計な寄り道をせず、真っすぐに高段者への階段を駆け上がりたいのなら9路盤を真剣に取り組んでみましょう。

きっと今まで見えなかった世界を感じ取ることができるようになります。