「基本死活を学ぶ意義とは何か?」について考察していきます。

基本死活を学ぶ意義

必修科目

あなたは基本死活をどれくらい解いていますか?

死活とは文字通り「生き死に」を意味しており、その基本形を「基本死活」と呼んでいます。

「上達するにはまず基本死活をやるべきだ」との声をよく耳にします。

これは半分正解であり、半分間違いでもあります。

上達に必要なのは、次の3つになります。

・実戦

・詰碁

・棋譜並べ

これらは囲碁における「3大上達法」と言っても過言ではありません。

そのうちの1つである「詰碁(基本死活)」を解くのは、上達には欠かせない要素だと感じてしまう方が多いでしょう。

しかし基本死活を解くことが必ずしも必要かどうか、実際には怪しいものです。

確かに囲碁の強い人は皆、多かれ少なかれ死活に取り組んできています。

それは「上達には死活が欠かせない」という先入観を抱いているからに他なりません。

はたして、本当に死活を学ぶことが棋力向上に必須なのでしょうか?

囲碁の実力はあくまでも「総合力」で決まります。

死活などの読みが弱くても、大局観でいくらでも弱点を補えます。

むしろ死活にならないような打ち回しをできてこそ、真の実力者と言えるのではないでしょうか?

級位者~高段者に至るまで、死活の勉強を信仰し過ぎています。

死活なんてものは囲碁における「20パーセント」の割合しか占めていません。

布石や定石、中盤の手筋、終盤のヨセなど他の80パーセントの勉強を疎かにしてまで取り組むものではありません。

ただし死活は他の分野に比べて、圧倒的に「取り組みやすい」という性質を持っています。

理由は単純です。

定石や定石、手筋やヨセよりも正解がはっきりしています。

特に基本死活は「外側」の状況を考慮しなくてよいので、包囲の内側だけで正解を導けます。

「上達するにはまず基本死活をやるべきだ」という言葉はむしろ

「他の分野は取り組みづらいから、正解のある分野をやるのが確実だよね」

と捉えたほうが自然でしょう。

死活はよく「筋トレ」に例えられますが、まさしく「やっていて損はない」といった感覚です。

布石や定石は時代によって変化しますし、手筋やヨセも状況により使い方を考えなければなりません。

しかし死活はいつの時代も、どんなときも「絶対」と言って差し支えないでしょう。

死活の中でも「実戦死活」は高難度のため、答えを出すのが容易ではありません。

とはいえ「地の増減」ではなく「石の生き死に」だけなら、必ず答えを導き出せます。

囲碁に必要なのは「読み」と「計算」です。

布石はよく分からないので、感覚を頼りに打ち進めます。

定石は相手に変化されると、感覚と読みに頼らざるを得ません。

手筋は周囲の状況によって、つまり感覚と読みを合わせて使い分けます。

ヨセは目算できているならまだしも、できていない部分は読みではなく感覚の世界です。

死活は唯一「感覚」といった曖昧な要素に頼らず、読みだけで打ち進められます。

感覚的に打てないというのは、すごく窮屈に感じるかもしれません。

ただ取り組んだ分だけ成果を出せるのは、死活をおいて他にないでしょう。

確実に上達したいのであれば、死活は囲碁における必修科目と言えそうです。

実戦的なイメージ

囲碁に限らず、何事も「基礎固め」は欠かせない重要なポイントでしょう。

囲碁の基礎とは「死活」であり、基本死活はその最たるものです。

学校の教科で例えるなら、次のようになります。

・国語=定石

・数学=死活

・社会=布石

・英語=ヨセ

・理科=手筋

「国語・社会」は文系であり、情報を読み解く力が必要となります。

「数学・理科」は理系であり、論理的に思考する力が求められます。

「英語」は単語、文法を覚えて使いこなす力が不可欠でしょう。

これらを囲碁に当てはめると以下の通りです。

「定石・布石」

盤上の状況を理解して、的確な応手を導き出す

「死活・手筋」

アタリ、ダメヅマリなどの利き筋を最大限考慮して次の一手を決める

「ヨセ」

2線・1線のハネツギといった基本形を覚え、先手・後手ヨセを手順よく打つ

「数学」のような論理的な思考はどの教科にも必須でしょう。

それと同じようにアタリ、ダメヅマリといった「利き筋」はどの分野においても出てきます。

この利き筋こそ、囲碁における基礎中の基礎に他なりません。

そして利き筋を学ぶには「基本死活を解く」のが一番手っ取り早いのです。

あなたは今まで言われるがまま、死活や詰碁を解いてきたのではありませんか?

はっきり言って、利き筋の勉強ができていれば死活を解く必要はないでしょう。

最低限の「カケ眼」「中手」「打ち欠き」さえ分かっていれば、あとは利き筋を頼りに正解を導き出せます。

しかし死活には、他の4つの分野よりも利き筋を学びやすいという特徴があります。

むしろ他の分野の基礎固めのために基本死活を解くといった構図のほうがしっくりきます。

ちなみに「問題が解けなければ、答えを見ても構わない」と言われています。

それはその通りです。

とはいえ「よく出てくる基本形は答えを覚えましょう」という言葉は少し疑問が残ります。

なぜなら死活を解くのは、他の分野の底上げの意味も含まれているからです。

趙治勲先生は

「詰碁を解くために詰碁をやるんじゃなくて、実戦で活かすためにやる」

と仰っています。

まさに言い得て妙ですね。

勿論、基本形を暗記するのは死活において便利なことかもしれません。

ただその形が出て来なければ、実戦では何の役にも立たないでしょう。

死活の問題は「隅」が最も多いのですが、その理由が分かりますか?

答えは「利き筋が多いから」です。

死活をやるのは「利き筋に強くなる」ために他なりません。

それなのに答えを覚えてしまっては、せっかくの勉強も効果が半減してしまいます。

死活はあくまでも「実戦の一部」に過ぎません。

いくら死活を極めたとしても、生死に関わらない状況ではどうしようもありません。

筋トレのために筋トレをしても、競技に勝つことはできないでしょう。

だからこそ、どうやって死活を実戦に活用するのかという組み立てが必要になります。

ここで一つ質問をしましょう。

死活とはどういった状況下で起こり得ますか?

答えは簡単ですね。

1,生きるのに十分なスペース(眼)がない場合

2,周囲を完全に包囲されているとき

すなわち意図的にそういう状況を作り出さなくてはいけません。

死活を解きながら学ぶのは、正解ではなく実戦との関連です。

隅は相手の眼を奪ったり包囲しやすく、また利き筋も多いのが特徴でしょう。

そういった実戦的なイメージを膨らませることでより一層、効果的な学びを得られます。

上達への軌跡

囲碁の問題集でよくある「基本○○」というのは、いったい何を基準に決めているのでしょうか?

有段者にとっては当たり前のことでも、級位者にとって難しいことはいくらでもあります。

「基本」という言葉を無責任に使うべきではありません。

アタリを覚えたばかりの人に「三目中手」の問題を出せば、当然ながら「応用問題」となります。

あなたにとって基本であるかどうかを判断するのは、あなた自身しかいないでしょう。

とりあえず、ここでは簡単に解ける問題を「基本」としておきましょう。

簡単といっても「5分かかる」くらいを目安にするとよいかもしれません。

なぜなら死活は「正解かどうか」を見極めるのに違うルートの検証も必要不可欠だからです。

よく「ひと目(1分)で解けるようになりましょう」と言いますが、それは現実的ではありません。

仮に1分以内に解けたとしても、読み落としがないか確かめないことには実戦では怖くて打てないでしょう。

それこそ答えを覚えていれば、すぐに解答を導き出せます。

しかし先ほども言ったように、それでは十分な学びを得られません。

「ひと目で解けるようになりましょう」ではなく、

「ひと目で解けるくらいやり込みましょう」といった意味合いでしょう。

5分かかる問題を1分以内に解けるようになれば、もう自然と筋や急所を覚えたも同然です。

死活はやればやるほど、基本のハードルが下がってきます。

逆に簡単な問題を疎かにすればするほど、いつまで経っても問題の守備範囲は広がりません。

とはいえ死活、および詰碁に取り組むだけ大したものです。

上達を目指すのであれば、難しい問題に取り組む姿勢もありでしょう。

詰碁の取り組み方とは?

※興味のある方はこちらも合わせてご覧ください。

死活を解いているからといって、魔法のように上達が早まるわけではありません。

強い人は皆、多かれ少なかれ死活を解いています。

しかしながら、死活を解くのが好きな人は極めて稀です。

強くなるために仕方なく解いているといった感じでしょうか。

つまり死活の他にもたくさん勉強しているからこそ強いのです。

対局はもとより、布石や定石、手筋やヨセの勉強も嬉々として取り組んでいます。

すると死活の勉強と相まって「相乗効果」が生まれます。

そういう正の連鎖を積み重ねることにより、上達がどんどん早まります。

何事もバランスよく取り組むのが一番ですね。

定石を覚えてから定石後、そして死活まで繋げられたら最高です。

今流行りの「単三々入り」定石後の隅の死活はぜひ取り組んでおきましょう。

どのように定石からその後の死活に至るのか?

そこを研究してこそ「学び甲斐」があります。

よくないのは「基本死活200問」といった本をただ漫然と解くことです。

死活に至るまでの背景を知らなくては実戦に応用できるはずもありません。

繰り返しになりますが、実戦に応用できて初めて勉強の成果が出てきます。

スポーツでも競技の役に立たない筋トレはしないでしょう。

死活もそれと同じです。

とにかく解ける範囲の問題に取り組みながら、実戦的な活用を考えていきます。

「死活にするにはまずスペースを狭めないといけない」

「5目中手以上の急所はないから、6目以下に狭めよう」

「眼を奪ったら、今度は封鎖するように包囲網を敷こう」

「利き筋が多いと生きられるから、なるべく味良く打とう」

このように死活に繋げる道筋を自分なりに考えていくことが上達への軌跡なのです。

ただ目の前にある問題に取り組むだけでは不十分でしょう。

対局に勝つことを念頭に置いた勉強の仕方こそ、あなたを上達へと導きます。