「図形に基づく囲碁の打ち方」について考察していきます。

図形に基づく囲碁の打ち方

図形と場所の効率

囲碁は「最後に地の多いほうが勝ち」というゲームであり、地とはすなわち「空間」のことです。

一手一手の石によって空間を囲む以上、空間を形作る「図形」の効率で地の大小が決まります。

それでは、囲碁における最も効率のよい図形とは一体どんな形なのでしょうか?

一般的に一番面積の大きくなる図形は「円形」になります。

図形を囲む周りの長さが同じ場合、円形が最も効率よく面積を囲むことができます。

しかし囲碁は正方形の碁盤を用いて、タテヨコの線の交点に石を並べていきます。

石を「ナナメ」に並べると切れてしまう恐れがあるので、タテヨコにしっかりツギながらでないと最終的に地を囲うことはできません。

よって囲碁において「曲線」というのは地を囲う効率が悪いのです。

盤上で最も面積の大きくなる図形は「正方形」になります。

仮に地の大きさが「16目」になるように計算してみましょう。

長方形なら「2×8」で囲うことになりますが、正方形なら「4×4」で囲うことができます。

同じ地の大きさに対して、長方形よりも正方形の方がより少ない石数しか使いません。

三角形を始め、他の図形など論外と言ってよいでしょう。

一見して、正方形よりも面積が小さいことは明らかです。

囲碁における最も効率のよい図形は「正方形」ということがわかりました。

それでは、盤上のどこに正方形を作ると一番効率のよい地(空間)になりますか?

これは皆さんご存知の「隅」と言われる場所です。

石数をなるべく使わずに地(空間)を囲うには、盤端(崖)を利用するのが最も効果的でしょう。

ただし盤端は白黒どちらの味方もしません。

味方の石で作られた厚みと違いますから、囲い方が甘いと「裏切られる」心配があります。

しかも最も効率がよいため「激戦区」でもあり、大きく囲おうとすると中に入られてしまいます。

結局のところ、隅(両辺)を利用して最大限の正方形を囲うのは机上の空論でしかありません。

盤上で正方形の空間を囲うには「辺」の方がより現実的ではないでしょうか?

効率のよい隅を譲りながら辺に展開していけば、そこから中央に進出するのも難しくありません。

「三連星」がよい例であり、両隅の三々を明け渡す代わりに辺~中央へ展開しようとする作戦です。

「両辺」を扱う隅よりも「一辺」しか扱わない辺のほうが裏切られにくいというメリットもあります。

もちろん「辺」を邪魔されたら、今度は「隅」に向かうまでのことです。

地(空間)を囲う性質上、隅と辺の両方を取ることはできません。

仮に取れたとしても分断されていては、地を囲う効率が著しく悪くなってしまいます。

具体的には「右上隅」と「右辺」と「右下隅」の3か所を白番が取ったときの形を想像してみてください。

各所それぞれ白地にするのはとても「大きい」とは言い難いでしょう。

右上隅~右下隅まで連なって取っているなら、多少話は変わります。

しかしそれだけ独り占めしているのは、他の場所を黒に取られているということに他なりません。

あるいは中央の厚みと換わっている可能性が高く、三線に押さえつけられているのかもしれません。

囲碁は常に相対的なものですから、一カ所にこだわっていては全局的なバランスを崩してしまいます。

また盤端の効率にこだわると中央への進出が疎かになり、「正方形」ではなく「長方形」の地になります。

盤端の効率を優先するのか、あるいは図形の効率を優先するのかは着手の選択に大きく関わってきます。

地(空間)を囲うとき「反対側」を同時に打つことはできませんから、そこら辺も考慮して打ち進めていく必要があります。

点から線、線から面への構築

盤上における一手一手の着手のすべてはただの「点」でしかありません。

盤端に引かれた「線」を利用するため、始めから「面」ができるように錯覚してしまいます。

しかし実際には、盤端に引かれた線は「どちらの味方」というわけでもありません。

だからこそ、点と点をつなぎながら「味方の線」を作っていくことが面を作る上での第一歩となります。

「一間トビに悪手なし」との格言はまさしく囲碁の核心を突いた言葉と言えるでしょう。

最終的に「地(面)」にするのに「一間(線)」で連絡していくのは、誰がどう見ても理に適っています。

「ノビ」て連絡していくのは進みが遅いですし、「二間トビ」では連絡が不十分で線が切れてしまう恐れがあります。

もっとも周囲の状況次第では「一間トビ」が悪手になることも考えられます。

もちろん「ノビ」や「二間トビ」が好手になる場面も数多く存在します。

石がぶつかって戦いになっているときは不用意に石を離さずに「ノビ」ておくのが無難です。

模様を広げるような展開であれば、「二間トビ」や「大ゲイマ」などの足の速い打ち方が有効になります。

線を引くだけではなく、相手の線を「切る」ことも「地(面)」を争うためには欠かせません。

囲碁における切りとは?

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自陣の図形を効率よく作るには、敵陣の図形を崩すことが相対的に必要不可欠なのです。

ただでさえ地(面)を構築するのが大変なのに、連絡(線)を切られた挙句に石(点)を取られてしまってはもう訳が分かりません。

簡単に崩されないためにも「抑止力」として常に攻める姿勢を見せることが大事になります。

盤上のどこに地(面)を作るのかは展開次第ですが、一番バランスの取れた「辺」をメインにするとよいでしょう。

「両辺」を扱う盤端では「裏切られる」心配があるので、大きく囲うことができません。

かといって自陣の石のみで「中央」を囲うのは、たとえ大きく囲えたとしても相対的に効率が悪いかもしれません。

「一辺」を利用しながら中央へ進出していくのが、実は最も効果的な地(空間)の広げ方なのです。

できれば「一隅+一辺+中央」という構図を描けると、より理想的な正方形を築きやすくなります。

具体的には「小目+五間ビラキ」の構えから中央に進出していくスタイルです。

あるいは「小目のシマリ+カカリ」といった布陣でも構いません。

「中国流」の構えこそ「小目+五間ビラキ」であり、「一隅+一辺」から中央を目指す構えでもあります。

5手目に「小目のシマリ」を打った後、辺に展開していくのも「一隅+一辺」から中央の立体を目指す構えの1つです。

その他にも「小林流」「ミニ中国流」「小目の大ゲイマジマリ」など、すべて「一隅+一辺」から中央を目指す作戦になります。

ちなみに「三連星」は「一辺+中央」の構えであり、隅を明け渡す代わりに中央への進出が一歩も二歩も早くなっています。

隅を使わない分だけ「中央の広さ」を活かした地を囲わなくてはいけません。

言うまでもなくただ囲おうとしても上手くいきませんから、相手の「図形」を邪魔しながら自陣の図形を構築していくことになります。

戦いながら図形を構築していく感覚を学ぶには「定石」を勉強するとよいでしょう。

激戦区の「隅」における石のぶつかり合いによって、どのような「ワカレ」になるのか知っておくと非常に便利です。

石を切り結んだり、捨てたりしながら図形の「形作り」をしていく過程を学ぶことは上達への確かな近道となります。

なぜ定石を覚えたほうがよいのか?

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図形を崩す読みの力

基本的に序盤から大きな地(空間)を囲うことはできません。

布石はあくまでも中盤戦への準備段階に過ぎず、中盤戦を戦い抜いて初めて地の枠組みがはっきりします。

途中で戦いなった場所は「部分的に終局」して地になりますが、全局的に戦いを運営していったほうがより大きな地を囲うことができます。

今流行りの「単独の三々入り」は隅の地を囲うためではなく、隅に拠点を作らせない意味合いになります。

「一隅+一辺+中央」の構図を描かせないために「邪魔する」目的で入っているのです。

置き碁でも上手の考え方は「作る」よりも「作らせない」ことを意識しています。

置き石が邪魔をしていて、とても白地を作ることができる状況ではありません。

そこで、黒石同士の「点」を結びつかせないように「ツケ」や「切り」を多用して黒石の連絡を防ぎます。

戦っている最中に黒石を取るのは、本来の目的ではなく二次的な効果によるものです。

あくまでも黒石を「連絡させない」ことが第一の目的であり、それは「黒地を作らせない」ことでもあります。

置き碁における下手の戦略は「地を作らない」ことです。

初めから黒地を作ろうとしても小さく囲うしかなく、白に妨害されては思うようにまとまりません。

最初のうちは「連絡させない」「地を作らせない」ほうが、はるかに打ちやすいのです。

考えてもみてください。

「一手(一点)」で「地(面)」を囲うことなんて、できるはずもありません。

「一手(一点)」では「連絡(線)」すらまともにできません。

しかし「点」では「面」や「線」を作れなくても、邪魔することは容易です。

三間ビラキへの「打ち込み」や模様の「消し」など、すべて「一手(点)」だけで済んでしまいます。

当然ながら「生きる(面を作る)」ために動かなければなりませんが、邪魔することが目的ですから捌き形を作るだけで十分でしょう。

置き碁の白番(上手)の動きをよく見ていれば、地を作るメカニズムがよくわかります。

まず置き石の分だけ黒が「プラス」の状態で始まります。

すると白は黒のプラスを削る作業から入っていきます。

黒のプラスを削っていき、あわよくば「黒石を取る」ことで黒をマイナスに転落させることができます。

そこまで至らずとも、双方に差がなくなってきたのを見計らって今度は白地を作っていきます。

置き石の数が多ければ多いほど、黒のプラスを「削る」作業が欠かせなくなります。

互先の場合は「二隅」を得る権利がありますから、黒地を削る作業に注力しなくても十分打ちこなすことができます。

とはいえ、やはり地を囲うよりも「地を囲わせない」ほうが打ちやすいことには変わりありません。

布石での配石は中盤戦への準備段階であり、地を囲うための「拠点」作りに他なりません。

しっかり地を囲うのではなく、「何となく」枠組みを決める程度に考えておきましょう。

囲碁における地とは何か?

囲碁における模様とは何か?

囲碁における一局の組み立て方とは?

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囲碁は「大局観」と「部分の読み」を組み合わせながら着手を選択していきます。

大局観とは「どこに地を作るか」を決めるものであり、部分的な読みとは「地を作らせない」ために打つものです。

石の接触から切り違いになり、手筋を駆使して最終的な死活を判断するには「読みの力」が必要になります。

勢力を増しながら模様を広げ、厚みを構築して地にするまでの過程においては「大局観」が欠かせません。

どちらも合わせて「必要不可欠な」ものですが、多くの方が「読み不足」になっています。

邪魔する動きを察知できれば、図形を構築していくのは決して難しいことではありません。

まずは「読みの力」を身につけることが、より効率的な図形(空間)を囲うための第一歩となるでしょう。

囲碁における読みとは何か?

詰碁の取り組み方とは?

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囲碁において「地を囲う」というのは、想像以上に難しく大変なことなのです。

「点」から「線」になり、「線」から「面」になって初めて「地(空間)」を囲うことができます。

一手一手のプロセスを大事にしながら、されど流れのままに一局を最後まで打ちきってみてください。