
「囲碁ブーム到来へ向けた施策」について考察していきます。
日本碁界の今
囲碁は世間的にそれほど広く認知されていません。
今は将棋がよくニュースに取り上げられて注目を集めていますが、囲碁はまだまだ話題不足です。
将棋が世間を賑わせているのは藤井聡太七段の影響が大きいでしょう。
もちろん羽生善治九段ら現役棋士を始め、引退された加藤一二三先生のタレントとしてのご活躍の賜物でもあります。
囲碁界の展望は良くも悪くも井山裕太五冠1人の肩にかかっている印象を受けます。
他にも頑張っている棋士は大勢いますが、どうしても中韓の棋士に比べて見劣りしてしまいます。
いわば将棋はかつての「相撲」のようなもので、国内で番付を争っているため名誉が守られています。
一方、囲碁は現在の「柔道」のようなものであり、世界的に広まったからこそ威信を守れないジレンマがあります。
相撲はことあるごとにスキャンダルに見舞われますが、それでも期待の力士を担ぎ上げて人気を維持できています。
将棋も一時期は「カンニング」で窮地に立たされましたが、藤井聡太という天才の出現によって見事マイナスのイメージを払拭することができました。
柔道で人気の選手になるためには「世界での活躍」が必要不可欠でしょう。
オリンピックで金メダルを複数取った選手は引退してもタレントや議員として活躍しています。
囲碁で人気の棋士になるのも「国際棋戦での活躍」が必須になります。
現在の世界ランキングで100位以内に入っているのは、井山裕太と一力遼八段しかいません。
ここ数年、ほとんど2人の名前しかなく他の棋士は全員100位圏外です。
「中韓の棋士と比べて、日本の棋士は国際棋戦の出場機会が少ないから」というのは言い訳になりません。
これまで数少ない機会で負け続けていますから、実力的に劣っていると評価せざるを得ないでしょう。
こうなると世間の注目を集めることは到底かないません。
世間は実力を正当に評価するため、一競技の頂点に対してのみ賛辞を贈るのです。
井山五冠の実績は間違いなく日本囲碁界の歴代トップですから、羽生善治九段との国民栄誉賞受賞も十分納得できます。
しかしながら中国の「カケツ」韓国の「パク・ジョンファン」を始め、「上には上がいる」こともまた周知の事実でしょう。
恐らく日本の棋士が国際棋戦で活躍するには、早くてもあと10年ほどの年月が掛かります。
今小学生の子たちがAIを上手く活用して勉強できれば、中韓の英才教育と大差のない環境になります。
これからの時代「英才教育」は「AI教育」へと進化していくことでしょう。
そうなると当然ながら日本だけではなく、世界中の子どもたちに勉強する機会があります。
今や発展途上国の田舎にさえ「スマホ」や「タブレット」が存在しますから、学ぶチャンスは皆平等に与えられています。
特に囲碁は「言語の壁」を超えて誰でも楽しめる素晴らしいゲームです。
またAIの出現によって、1人でも高いレベルの勉強をすることができます。
世界中で囲碁を打つ機会が増えるにつれ、今後ますます「世界戦の激化」が予想されます。
好循環を目指す
「卵が先か、鶏が先か」という議論ではありませんが、「人気が先か、結果が先か」というのは常に考えさせられます。
「世界の頂点に立つ(結果が出る)から人気競技になる」
のか、あるいは
「人気競技だからこそ競技人口が多く、それによって結果が伴う」
これはどちらが正しいのか、答えを出すことは難しいでしょう。
「野球やサッカーが人気だからこそ運動神経の良い子が集まり、世界でも結果を残すことができる」
もしくは
「フィギュアスケートや体操で毎年のように金メダルを取っているからこそ、習いたい子どもが増える」
このどちらも正しいのではないでしょうか?
つまりどちらにしても好循環を保てれば、競技としての人気もレベルも上がっていくはずです。
囲碁界の現状を考えると「結果を先に出す」というのは非常に難しいと言わざるを得ません。
井山五冠が世界の頂点に立ったとしても、それに追随する棋士がいなければ人気も長続きしません。
まずは囲碁を魅力的な「人気競技」にしてから、習いたい子どもを増やすほうが現実的ではないでしょうか。
何よりも「子どもたち」に囲碁の魅力を感じてもらうことが大切になります。
仲邑菫さんのように若干10歳(0か月)にプロ入りすることができるようになりました。
5歳で囲碁を始めれば、わずか5年でプロレベルに到達できるということです。
さらに5年後、立派に世界で戦える棋士にまで成長することは十分にあり得ます。
世界で活躍する日本の棋士に憧れて「囲碁を習いたい」という子どもが増えるなら、次第に人気も競技人口も好循環していきます。
ヒカルの碁が流行った20年前に囲碁を始めた当時の子どもたちは、大人になった今でも囲碁を続けています。
囲碁は一度覚えてしまえば忘れることはなく、競技から離れていても棋力が落ちることはありません。
しかも生涯を通してずっとやり続けることのできる数少ない「競技」であり「趣味」でもあります。
人間である以上、頭脳ゲームに対する興味は少なからず誰にでもあるものです。
囲碁を変則的な「パズル」と捉えるなら、解いてみたい人は多いのではないでしょうか?
何かしらのきっかけで人気に火が付けば、囲碁は多くの人を魅了するゲーム性を秘めています。
しかしせっかく「漫画・アニメ(ヒカルの碁)」で話題になったのに、チャンスをまったく活かしきれないままブームが過ぎ去ってしまいました。
一度冷め切ってしまったものを再び温め直すのは一段と労力が要るでしょう。
なぜなら「ヒカルの碁のときはこんなものじゃなかった」のように過去のブームと比較されてしまうからです。
少し流行ったくらいでは、瞬く間にブームの火は消えてしまいます。
特に子どもたちは流行に敏感ですから「つまらない」と思ったらすぐに止めて別のところに行きます。
子どもたちに見限られたら、もはや好循環など望むべくもありません。
次世代を担う子どもたちに認められないようでは、新しい時代に淘汰されてしまっても仕方ないでしょう。
歴史ある競技だからこそ文化の一端を担っていることを忘れず、次世代に受け継ぐ工夫をしなければならないのです。
ブーム到来への施策
早くから子どもたちに囲碁を始めてもらうには「親」の存在を無視できないでしょう。
子どもに「とりあえず、やらせてみる」ことができるのは、両親をおいて他にいません。
何も親が熱心に取り組む必要はなく、あくまでも我が子に勧める役割を担ってもらうのです。
そういった点において、藤井聡太七段の出現は将棋界においてまさに天恵と言っても過言ではありません。
中学生棋士としてデビューした当初から落ち着いた受け答えをしていて、その姿は世間の大人たちを感嘆とさせました。
「ああ、うちの子もこれくらい落ち着きがあったらな」なんてことを考えながら、我が子に将棋を習わせている親も少なくないでしょう。
藤井聡太七段の好印象も手伝って「将棋をやると何となく賢くなりそう」と考えても不思議ではありません。
その点、囲碁は「頭が良くなりそう」というより「難しそう」といったマイナスイメージの方が上回っています。
仲邑菫さんのような天才少女が現れても、まだまだ世間では「老後の趣味」としてシニア世代が嗜むイメージが強いのです。
実際に囲碁の競技人口はほとんどシニア世代の方ばかりです。
若い層のほとんどは「ヒカルの碁世代」と言われる20年前のブームで始めた人たちでしょう。
そのヒカルの碁世代の多くが「親」になってもおかしくない年齢になっています。
さて、この親世代に再び「囲碁は面白い」ということを知ってもらうためにはどうすればよいのでしょうか?
わかりやすい施策としては「ゆるキャラ」のデザインを公募して、売り出していくという手法です。
「囲碁(競技)関係ないじゃん」という声が聞こえてきそうですが、ブームを起こすには「吊り橋効果」を期待するしかありません。
つまり「囲碁のゆるキャラが好き」という気持ちが、いつの間にか「囲碁も好き」という感情に移り変わっていくのです。
ヒカルの碁を読んでも囲碁の打ち方はまるっきりわかりません。
しかし「ヒカルの碁の世界観が好き」という気持ちが「囲碁を始めるきっかけ」になった人は大勢います。
人間が興味を持つのは「人」であり、その人の「キャラクター」です。
そしてその人が「何をしているのか?」にも興味が湧いてくるのは至って自然な流れではないでしょうか。
一番よいのはプロ棋士が結果を出して、メディアに露出することです。
ただ、現状では「世界戦で活躍する」のはハードルが高すぎて無理というものでしょう。
それなら「人」でなくても「キャラクター」で構いません。
いわゆる「擬人化」というやつです。
擬人化とは「人でないものを人のかたちにして表現すること」を指します。
つまり「囲碁の素晴らしさを体現した」キャラクターを生み出すのです。
囲碁の素晴らしさといっても、無理に囲碁っぽくする必要はどこにもありません。
単純に白黒の色合いをモチーフに「パンダっぽい」キャラクターにするのが無難でしょう。
あるいは囲碁の別称である「烏鷺(カラスとサギ)」のゆるキャラコンビを結成してもよいでしょう。
昨今ではゆるキャラブーム全盛ですから、デザインをこだわるよりもシンプルに攻めたほうがわかりやすくて好感を持たれます。
当然ながら「中の人」もちゃんと用意しておきます。
棋力は県代表レベルで「かわいい顔してめちゃくちゃ強い」ことを売りにすると良いかもしれません。
いずれにせよ囲碁界という狭い世界に居座らずに、少しでも世間に認められる活動をすることが大事になってきます。
ゆるキャラによるイメージアップは囲碁ブーム到来への布石に過ぎません。
きっかけを得ることも大事ですが、そこからどう行動していくのかも合わせて考える必要があります。
それこそ「布石(きっかけ)」次第で「中盤(行動)」が変わるのと同じです。
囲碁に限らず、今やイメージアップはどの分野にも欠かせない重要な施策の1つになります。
是非とも「囲碁ブームの到来」によって周りにたくさん囲碁を打てる人が増えて欲しいと願っています。