「囲碁におけるコミの役割とは何か?」について考察していきます。

囲碁におけるコミの役割

持碁を認める

あなたはコミをどのように考えていますか?

コミとは囲碁における「ハンディキャップ」の1つです。

互先の場合はどうしても「先番有利」になってしまいますから、後手番に適切なハンデを与えなくてはいけません。

現在のコミは日韓で「6目半」であり、中国は「7目半」となっています。

この数字が適当かどうかは誰にも分かりません。

なぜなら「コミに合わせて打ち方を変える」のがプロの世界では常識だからです。

ネットを見ていると

「コミ5目半の時代の半目勝ちが現代では半目負けになるの?」

なんてズレた意見を目にすることがあります。

どう考えてもそんなわけありません。

誰しも「勝つために」勝負していますから、勝ち負けの境界線を意識しないことはないでしょう。

ただし目算ができないアマチュアなら話は別です。

級位者なら「5目以内」は誤差の範囲ですし、有段者でも「半目」は完全に時の運次第と言えます。

とはいえ意識していなくても実力が拮抗していれば、自然と良い勝負になります。

だからコミが何目であるかというのは、非常に大切な決め事であることに変わりありません。

私が囲碁を始めた頃は「ヒカルの碁」全盛であり、コミは5目半でした。

そのときは「黒有利」という見解が一般的だったので、今の6目半では「白有利」に感じてしまいます。

ここら辺は「意識の問題」が大きく影響しています。

厳密に「コミ何目が正しい」と断言するのは、とてもできない相談です。

そもそも「半目」というのがナンセンスであり、ハンデが適正なら「持碁」を認めるべきではないでしょうか?

とりあえずコミを「6目」あるいは「7目」に設定しておき、持碁の場合は「打ち直し」すればよいのです。

こういう主張は大概、認められることはありません。

なぜなら「一局で決着がつかない」からに他なりません。

しかしアマチュアのトーナメント戦ならまだしも、プロ棋戦で「一局勝負」をする必然性がどれくらいあるのでしょうか?

プロ野球にも「引き分け」がありますし、相撲にも「取り直し」の制度があります。

サッカーのように「勝ち点」のシステムを導入すれば、打ち直しせずとも「勝ち点1」としてカウントすることができます。

引き分けの導入により、もし持碁のケースが大幅に増えるのであれば、それはコミが「適正である」という証明になります。

今の「半目」は一局で決着をつけるために必須ですが、いわば「持碁、黒勝ち」または「持碁、白勝ち」と言っているようなものです。

仮に適正なコミを「6目」であるとしましょう。

コミ5目半とは「持碁、黒勝ち」と同じであり、コミ6目半とは「持碁、白勝ち」と同じです。

このたった「1目差」のために今まで定石だった手順が使われなくなったりしています。

一局だけなら、まだ影響は少ないのかもしれません。

しかし何十局、何百局と対戦していけば、この1目差が必ず戦績に響いてきます。

だからこそ、プロ棋士がコミに「コミット」して打ち方を試行錯誤するのは当然でしょう。

※若干コミットの使い方がおかしいのはご了承ください。

棋戦や大会の都合でコミに「半目」を付けているのは釈然としません。

囲碁の真理を追究するのであれば、黒・白のどちらかに有利に働く半目をなくすべきでしょう。

「持碁=引き分け」を認めることにより、バランスの取れた囲碁の神髄たる打ち方を目の当たりにできるかもしれません。

1目を笑う者は1目に泣く

級位者のあなたは「コミなんて何目だろうと関係ない」と考えています。

しかし「1円を笑う者は1円に泣く」という言葉もあるように小さいものをバカにしてはいけません。

そもそも囲碁における「1目」とは決して小さい数字ではありません。

100目の地を作るなら1パーセント、50目の地を作るなら2パーセントの割合を占めます。

勝負が拮抗してきたときの1,2パーセントは勝敗を左右するのに十分な数値と言えるでしょう。

ましてやコミ6目半は7,80目の地に対して「8パーセント」もの割合を占めています。

コミなんて関係ないというセリフはもはや「消費税なんて関係ない」と言っているようなものです。

もし黒地65目、白地60目といった状況なら、コミの価値は「10パーセント」まで上がります。

消費税が2パーセント上がるのは大変な議論を起こしますが、それに比べて「1目」の価値を軽視しがちなところがあります。

試しにネット碁の対局結果に「コミ6目」または「1目」を足してみてください。

級位者の方は「5目半負け」が逆転して、有段者の方は「半目負け」が逆転します。

それで勝率がどれくらい変わるのか、確かめてみるのも面白いのではないでしょうか。

ちなみに高段者やプロ棋士は初めから「コミ」や「1目」を意識しているので、やる意味はまったくありません。

コミのありがたみを少しでも自覚すれば、目算しようという意欲も多少は出てくるでしょう。

級位者がコミを軽視している理由は「生き死に」が大変なため、それどころではないからです。

石の生き死には「十数目~何十目」にもなりますから、そこに神経をすり減らすのもよく分かります。

しかし囲碁はあくまでも「地合いのゲーム」です。

布石~中盤を経てお互いの石が治まれば、あとは「どちらの地がより多いか」という勝負になります。

級位者、あるいは有段者の方でも「死活」と「地合い」を1つの括りとして打てていません。

例えば、互先の相手と「定先」で打ったとしましょう。

当然コミ分の余裕が生まれるわけですから、少しくらい石が緩んでも勝負になります。

石が緩むというのは「譲る」という発想に他なりません。

石を突っ張らず、空間を譲っていけば「死活」が生じる必然性もなくなります。

ここで問題となるのは「どれくらい譲るべきか」という判断でしょう。

普段から目算していない方には「1目」という数値がどの程度の「着手」に相当するのか、どんぶり勘定では到底分かりません。

「定先だから6目半緩んでもいいんでしょ」と口にするのは簡単でも、実際にはどれくらいの妥協が適当なのか経験則に頼るしかありません。

盤上を「石の生き死に」だけではなく、コミを含めた「地の目数」で捉えることが大切です。

そのためには「終局まで打つ」のが何よりも効果的でしょう。

勿論、投了すべき碁をいつまでも投げずに打ち続けるという意味ではありません。

むしろ「大差をつけられず、地合い勝負に持っていく」心構えが必要になります。

級位者ならコミを含めて10目差以内、有段者なら5目差以内といったところでしょうか。

負けるにしてもそれくらいの差をキープして終局できるようになれば、1目の果たす役割がとても大きいものになってきます。

「1目を笑う者は1目に泣く」という言葉を身に染みて実感できるようになったとき、心底1目の価値を知ることができるのです。

ハンディキャップとしての役割

コミは何も互先だけに使われる代物ではありません。

今はハンデとして「置き石」が主流になっていますが、これからは「コミ」によるハンディキャップの需要が増えていくでしょう。

なぜなら置き碁では「定石が打てない」といった欠点が出てくるからです。

星以外の定石はもとより、星への「単三々入り」も打ちづらくて仕方ありません。

置き碁ではどちらかというと「嵌め手」のような手法も増える傾向にあり、お互いに健全な碁を望めないのではないでしょうか?

その点、置き石を「コミ」に換算してハンデを付けるのはとても有効な手段となります。

初段の棋譜を解説します!【十局目】

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さすがに9子局の手合を100目以上のコミで補うのはナンセンスなので、そこは置き石との併用で構わないでしょう。

大切なのは「より互先に近い感覚」を養うことです。

これは下手だけではなく、上手としても歓迎なのではないでしょうか。

置き石は定位置にあるため、いつも同じような立ち上がりにならざるを得ません。

囲碁の醍醐味である「布石」を打てないのは、囲碁の楽しみをなくしているようなものです。

置き石が多ければ多いほど、すぐに中盤戦の様相を呈してきます。

すると「手筋」や「死活」の重要度が増すため、自由自在な石運びを楽しむ余裕がありません。

布石から学ぶ自由な考え方とは?

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置き石があると盤上では当然ながら有利になります。

そのため目に見えるリードを守りきろうとして「固く」打つ方が後を絶ちません。

置き碁では、序盤が最も「石数の割合に差が出る」ことは間違いないでしょう。

9子局なら「9対0、もしくは9対1」から始まるわけですからね。

ところが手数を重ねていくうちに「99対90、もしくは99対91」となり、大した差はなくなってきます。

序盤に石を働かせない限り、中終盤で力の差が出てしまうのは自明の理でしょう。

しかしハンデをコミにすることで、見た目の優位はまったくありません。

囲碁では盤上の「印象」というのが非常に大きな意味合いを持ちます。

アマチュア、特に級位者は「黒番」を持ちたい方が多いのではないでしょうか?

理由は単純です。

先に打っているほうが盤上の見た目が良いからです。

コミという見えないハンデを意識するのは、級位者はもとより有段者でも大変でしょう。

置き石など「どう打っても勝てる」ように見えるかもしれません。

勿論、実力差を考慮してのハンデですから、そう易々と勝てるわけがありません。

むしろ見た目に惑わされて、下手がなかなか勝てない原因の1つになっています。

囲碁のスランプを脱出する方法とは?

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盤上で互先の勝負となると、あっという間に大差をつけられてしまう心配をする方もいるでしょう。

しかし実際にはそれほどの差はつきません。

なぜなら置き碁と比べて下手の「守るべき場所」が少なく、逆に上手の勢力に「攻め込む」ことができるからです。

考えても見てください。

9子も石を置いて、どこに白の勢力・模様・地が作れますか?

また黒は四隅、四辺、中央のすべてを占めている反面、守らなくてはならない場所が多すぎます。

得るものを先に得ているからこそ、白から攻撃目標に定められているのです。

互先で交互に打っていれば、バランスを取りながら極端な立場を避けられます。

それどころか「コミという財産」を奪われることは絶対にありません。

もし盤上で徐々に差が開いてきても、コミを頼りに粘る「胆力」が身に付きます。

置き碁だと盤上でリードを許した途端に「勝負が決まる」も同然です。

互先では「逆転力」が問われますから、置き石のハンデをコミにする意義は大いにあります。

まだハンディキャップとして主流ではないものの、AIの流行と共に必ずやコミが脚光を浴びるはずです。

そのとき盤上における戦略はどのように変化していくのか?

ハンデが欠かせないアマチュア、級位者ならではの楽しみではないでしょうか。