パンダネット初段vs初段の棋譜解説をしていきます。

 

布石解説

黒1,3,5の三手で三連星を敷きました。

三連星は先番である黒にとって王道の作戦と言えるでしょう。

白6のカカリに黒7の手抜きは予定の行動です。

もし白が両ガカリしてきても、中央にコスミを打っておけば右上隅は大丈夫でしょう。

白8の大ゲイマジマリなら黒9と上(中央)からツケて右辺一帯を広大な模様に仕立て上げます。

黒9~21まで黒は作戦通りの大模様を築くことができました。

白はどこから手を付けるのか悩ましいところです。

黒が大模様を敷いてきたときには、白からとっておきの対策があります。

次の白の一手では、左上隅のシマリに打っておくのがよい打ち方になります。

黒が右下隅の三々入りを防ぐのであれば、白も対抗して左下隅の三々を外側のコスミで守ります。

その後、黒が中央の模様の端と端を結んだライン上(※)に打てば、白は構わず左辺を囲いに行きます。

※できれば、端と端を結んだラインより一路外側(白のほう)に寄せるとなお良い。

つまり白は黒の大模様に対して、模様の囲い合いで対抗するわけです。

実のところこの囲い合いはとても良い勝負になります。

黒が碁盤の4分の1以上の広さで囲っているにも関わらず、すべて黒地にさせても半目勝負の碁にすることができます。

理由は単純です。中央の黒地は囲う効率が悪いのです。

たとえ右下隅~下辺と右辺の盤端を利用しても、右上隅の白地からぐるりと左下隅の白地まで囲ってしまえば白が囲い合いで負けることはありません。

もちろん多少中央の折衝で黒模様を値踏みする必要があります。

黒が大模様に臨むのは、白を黒模様へ入らせて存分に攻め立てるためです。

中央の広さには盤端の効率で対抗することが、地合い勝負においての賢い選択と言えるでしょう。

実際に武宮正樹九段と趙治勲九段の過去の勝負では、お互いに中央と盤端(隅・辺)で争って半目勝負となっています。

白22と右下隅に手を付けるのは普通の着想です。

白22は三々入りも考えられますが、黒石をわかりやすく強くするのは後々打ちづらいとの判断でしょう。

しかし白22~30まで眼形が乏しく、捌くには重い形になってしまいました。

黒31~37の追及が白にとって非常に厳しく、白40と二間(ハザマ)に空けて打つのも良くありません。

黒41では白のハザマを突くのが急所です。

白42の受けでは結局、黒43とハザマを突かれる形になります。

白は黒の大模様構想にまんまと嵌ってしまいました。

白22では大人しく三々に打っていたほうが、黒の厳しい攻めを受けずに済みました。

中盤解説

白44のヒキは本体の白石を守るために仕方ありません。

黒45の切りには白46,48と白一子を捨てる態勢ですが、黒49とさらに切りを入れて白石を厳しく追求してきます。

白はシチョウ不利なので、白50のケイマで右下の白石を脱出させます。

黒51のノビに白52と中央の白二子も動いてしまうのは、右下の白石が極めて危険になります。

しかし黒53には白54~62まで上手い具合に中央の白を捨て石にして、右下の本体を助け出すことができました。

黒63の一子抜きは黒石の味の悪さを解消する本手です。

白64、黒65の交換を決めて白も連絡を確かめました。

白66のスベリが白の疑問手でした。

白は中央の一間トビや左辺のどこかに打つのが単純な好点になります。

黒67と黒が中央のハネに回ったのは、左辺への影響力があり素晴らしい好点です。

白68の分断に黒69と反撃したのはナイスタイミングです。

相手が攻めてきた、利かしてきたタイミングで反撃するのは戦いの呼吸でしょう。

白72が失着で、黒73のアテが先手になってしまいました。

白72は抜きではなく、ツギで応じるべきでした。

黒73~81まで分断された右辺の白石が丸ごと取られてしまいました。

白82のアテは中央の好点ですが、黒81の抱えの後では中央の黒石に何の影響も与えていません。

白82で左下隅、または左上隅に先行していれば、まだ白には囲い合いで勝負する余地がありました。

序盤の白22で囲い合うのと、中盤の白82で囲い合うのとでは局面に大きな差があります。

それは中央が未確定であるか、確定しているかの違いです。

中央は地として囲おうとしてもなかなか囲いきれるものではありません。

それでも囲うとすれば手数を多く費やすことになり、結果として地の効率も悪くなります。

白82の局面では中央が黒番、白番と交互に打ち終えた形になっています。

つまり交互に打って自然と黒地ができているわけです。

もちろん左下方面にできた白の厚みもなかなか立派なものです。

しかし黒番、白番と交互に打って一手もかけずに右辺~中央一帯を黒地にできたのは、黒としてはまさに僥倖でしょう。

黒83とツケて、今度は黒が白模様へ荒らしに向かいました。

終盤解説

白83~87まで部分的には黒石の眼形は怪しい形をしています。

実際に左下方面、中央の白の厚みを活かすために隅から黒石の眼形を奪うことができます。

しかし白88と一手余計なことをしてしまいました。

白82とアテた以上、抜きたくなる気持ちもわかりますが中央の黒には響きません。

黒89,91に白92,94は黒の眼形を奪う急所です。

白98まで部分的に黒石の眼形はありません。

白88の手抜きでは、先に白92~98の攻めを打っておくべきでした。

もっとも白96では97にツグのが手厚い打ち方です。

黒99~105まで下辺の白石も危ないとあっては、白106の分断が必須です。

黒107,109と白二子を取って連絡できれば、黒の左下方面での捌きは成功です。

それでもまだ白には囲い合いで勝負する余地が残されていましたが、白112のツギで最後のチャンスも逸してしまいました。

白112のツギが不要な一手パスであることを各自ご確認ください。

白184手まで次に黒から順当にヨセれば、10目半程度の差で黒勝ちになります。

総評

白は右下隅のツケから右辺での捌きを完全に失敗してしまいました。

しかし白には幾度となくチャンスがありました。

つまり白には中盤の途中から布石を仕切り直し、左辺の白模様で勝負することができました。

左辺の白模様を広げて目いっぱい囲い合いで勝負すれば、黒もどこかで入らざるを得ません。

そうすれば、右辺で白が割りを食った分を取り返せる可能性がありました。

最後も左下隅では部分的に黒死の形になっていました。

どのようなフリカワリになるにせよ、勝負どころで白はもう一つ追及が甘かったことは確かでしょう。

黒にとっては布石の三連星の構えから右辺の攻めも予定通りであり、白の失敗が重なったこともあり少々上手く行き過ぎました。

本来であれば黒が右辺に力を入れた分、白も左辺を勢力圏にしているのでもう一波乱あってもよかったでしょう。

模様の碁は布石・中盤・終盤において囲碁の基本であり、王道でもあります。

初段を目指す者であれば、一つの型として打てるように勉強しておきましょう。

きっと模様の碁で培った攻めの感覚や囲い合いの感覚が様々な局面に活きてくるはずです。

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