パンダネット初段vs初段の棋譜解説をしていきます。

 

布石解説

黒1,3とすぐにシマリを打っても、5手目に下辺のどちらかの空き隅に回ることができます。

白4,6は黒1,3の大ゲイマジマリに対するけん制です。

黒7の三々入りはよくありません。

なぜならすでに白6のヒラキがあるため、白の厚みを壁攻めすることが難しいからです。

白8のオサエはこの一手です。

白10のケイマは「先手を取る」ための手法になります。

白14では手を抜いて、左下隅のカカリに先行するところでしょう。

白16まで後手を引くのであれば、白11とハネておいたほうが得というものです。

黒17の三々入りはよいでしょう。

白26まで右下隅と同形になったのち、先に黒29のヒラキを打てます。

白20は先手を取る打ち方なので、白24では左上隅を手抜いて左辺のヒラキに打つべきです。

白30のカカリは「手止まりの大場」になります。

すでに3隅、4辺がほとんど打たれていますから、左下隅に目を向けるのは至って自然でしょう。

黒31と受けたのは左辺の一子との連絡を確かなものとして、左上の白の厚みを「薄み」にするためです。

直接何か打たなくても「相対的に」黒石が強くなれば、白石が弱くなるようにできています。

白32,34のツケ引きは三々の急所(根拠の要点)のため、逃すことのできない場所です。

黒35のハサミは機敏な素晴らしい一手です。

黒35では二線のサガリがよく打たれています。

二線といえど左下隅の根拠の要点になっており、またヨセの「出入り」が大きい場所でもあります。

しかし右下隅の白の厚みに連絡されると下辺一帯の白石を攻めるチャンスがなくなります。

右下隅の三々入りも白石を「壁攻め」するために打っていますから、下辺の連絡を分断するのは一貫した黒の狙いでしょう。

白36、黒37を交換しておくのは、黒36のサガリを打たなかったので当然です。

白38のツケを利かした後、白40では中央から打つのがよい石の方向です。

黒41にボウシするくらいが適当なところでしょう。

白40と打つのは暗に右下隅の白石は「厚みではない」と認めているようなものです。

もちろん黒一子を攻めようとしているのはわかりますが、左下隅の白石と競り合いになるのは白もリスクを伴います。

それなら白は中央から「ボウシ、ボウシ」と黒石を煽ったほうが全局的に働きがあります。

黒41の一間トビで頭を出されると、左辺の黒石が「厚み」として大いに働きます。

白42~46まで利かした後、白48のボウシから本格的な競り合いが始まりました。

中盤解説

黒49のコスミで頭を出していきます。

通常、競り合いというのは「先に頭を出している」ほうが有利となります。

この場合も白48とボウシした時点で、圧倒的に白が有利な競り合いになっています。

しかし白には「実」がありません。

左下隅の白石が中央で厚みを築いても、すでに左辺の黒石は生きています。

白が厚みを働かせる場所がないのに対して、黒は競り合いながら自然と右辺の白模様に雪崩れ込めます。

先ほど白40のタイミングで白41と打っても似たようなものでしたが、白はなるべく早く治まって先手で他へ回りたいのです。

白50と打っても左辺の黒石には何も響きません。

左辺の黒石は「地」としては大したことありませんが、「厚み」としてなら申し分ない働きでしょう。

黒51の利かしは少々「甘い」着想であり、白は手を抜く絶好のタイミングになります。

白52と受けてあくまでも黒石に寄り付くのは「実」がありません。

白の方が戦う上でよい態勢だったとしても、その先に「何を得るか?」まで考えて打たないことには成果が上がりません。

いったん言うことを聞いてしまうと次から次へと利かされてしまいます。

黒53,55まで利かしたのち、黒57の押しに戻りました。

白58は好手か、あるいは緩手が何とも微妙なところです。

どのみち「地」としては大したことありません。

左上隅の白石の根拠を確保する意味で「好手」と言えます。

とはいえ、左辺の黒石の死活にはまったく影響していません。

「厚みに近寄るな」の格言に従えば、「緩手」と言っても差し支えないでしょう。

白50と打ったのだから、さらに一間トビして左上隅の白石との連絡を図るのが得策になります。

薄みである2つの白石が連絡して強くなるばかりでなく、中央への影響力も今後の戦いにプラスに働きます。

白58のヒラキには黒59のツケがピッタリの「モタレ攻め」になっています。

白石が強くなったと感じたら、すかさず利かしに行くのは機敏な打ち方でしょう。

ただ惜しむらくは白60のノビコミに黒61と左辺を受けてしまったことです。

今は地の増減を気にしている場合ではありません。

あるいは黒石の根拠を気にしたのかもしれませんが、左辺の黒は中央に進出する余地も残っているため心配無用です。

白62~66まで打つのであれば、白68では白69とノビているほうが自然でしょう。

常に「二目の頭」及び「三目の頭」は逃せない必争点になります。

ゆえに白68の出よりも黒69の叩きのほうが好点となります。

白70と「ごめんなさい」したのは、有段者なら辛い利かされに感じるはずです。

またそうでなくてはいけません。

「実益」のためなら頭を下げることも厭い(いとい)ませんが、1目にもならない利かされなどまっぴらです。

白70を「屈辱的」と感じることができれば、今よりもっと部分戦に磨きがかかることでしょう。

終盤解説

黒71と押さえて、依然として左下隅から中央へ伸びている白石への寄り付きを狙います。

白72のマゲはこの一手です。

たとえ黒72と封鎖されても白石が死ぬことはありませんが、ヨセの増減がだいぶ変わります。

「寄り付き」とはヨセにおける「攻め」であり、中盤においても重要な役割を果たします。

白72のとき右辺を二間ビラキするほうが大きいと感じるかもしれません。

しかし「大きな一手」を打つよりも「小さな数手」を積み重ねるほうが得する場合が多いのです。

黒72と封鎖できれば、左下隅のヨセはすべて「先手」になります。

囲碁は最終的には「地合い」勝負ですから、細かい得を積み上げるのも勝つためには大切な要素です。

黒73のツギに白74と手を抜いたのは「戦線離脱」の緩手でしょう。

黒75の二段バネが急所であり、黒81まで左上隅にじりじりと詰め寄ります。

白84の「逃げ出し」にどう対応するのか、黒の真価が問われます。

黒85~99まで、これでは「平凡な着想」でしかありません。

シチョウは白が有利であるため、白100の切り成立します。

結果的には弱石同士がつながり、白が大成功しています。

とはいえ、元はと言えば白が手を抜いて黒が仕掛けていったはずです。

「数的有利」が絶大な効果をもたらす囲碁において、連打した場所で割りを食ってはいけません。

白84の逃げ出しに黒85を利かした後、黒87では「二段バネ」して左下隅の白石を封鎖するのが急所になります。

白が脱出できないのを確かめてみてください。

【碁盤の「≡」設定から「Edit mode」をチェックすることで「検討」することができます】

白は黒三子を取り、白のカタツギと換わります。

次に白は左下隅に手を入れるしかありません。

先ほどの「黒72」でも解説したように、ここを封鎖できればヨセがだいぶ違ってきます。

それから黒は右辺の「ツメ」に回って地合いは上々です。

白74では少なくとも右辺の二間ビラキに打っておくべきでした。

白104の切りまで、一連のワカレは確かに黒の大失敗と言ってよいでしょう。

しかし白はそもそも打っている場所がよくありません。

白40まで手順を戻してみましょう。

よく見ると左辺よりも右辺の方がはるかに価値の高い場所であることがわかります。

白30の時点では左下隅の価値が高かったわけですが、白38まで左下隅は決着ついています。

あとは下辺の黒石を攻めながら、白は先手で治まって右辺の大場へ向かうだけです。

だからこそ、白40では白41の方向から打ちたかったのです。

実戦はつまらない左辺の競り合いに労力を割いてしまいました。

黒105のツメに先着することができれば、勝負はまだまだこれからでしょう。

この碁は294手まで黒の3目半勝ちとなりました。

総評

左辺以上に右辺で激戦が続き、一進一退のまま局面が進行していきました。

実は右上隅を中心とした黒模様が大きいことに気づいた白の打ち込みから、最後は左上隅とのフリカワリになっています。

このフリカワリは白に分が上がります。

なぜなら元々黒の勢力圏である右上隅を取られても白は惜しくないからです。

左上隅の黒石を取れたことにより地合いが拮抗してよい勝負となりました。

白の敗因は104まで、左上の黒数子を取ったことで少々緩んだことが一因でしょう。

結局、右下隅の白の厚みは攻められて「眼二つ」の生きになっています。

白114が緩手であり、黒113のアタリには中央から切り返して応戦するべきでした。

100手くらいでは「勝勢」と言えるものではありません。

どんなに良くても中盤戦で気を抜いてはあっという間に追いつかれてしまいます。

そもそも言うほど差のない勝負ですから、一時の油断が致命的な遅れとなります。

この碁はどちらも「部分戦」の打ち方は立派であり、「三四段」と言われても何らおかしくないでしょう。

ただし「大局観」はまだまだ改善の余地が残されています。

囲碁は「場所選び」こそ重要です。

良い場所を争うから「戦い」が起こるのであって、つまらない場所を取り合っても仕方ありません。

布石では「場所選び」を優先し、ある程度拠点が決まったら今度は「場所取り」に行きます。

ちょうど花見の場所取りのように「満開の桜の木の下」といった絶好のスポットを逃すわけにはいきません。

布石で様子を見ながら価値の高い場所がどこかを判断していきます。

囲碁はそれこそ一手ごとに価値が変わると言っても過言ではありません。

「一貫性」に沿って打ち進めるのも大事ですが、同時に「局面の変化」を敏感に感じ取ることが大切です。

環境の変化に柔軟に対応できるようになるのは「進化」の証でしょう。

基本を学びつつ、常識にとらわれない「両方の価値観」を合わせ持つことが、これからの上達に欠かせない要素になります。

一朝一夕では叶いませんから、1つ1つ地道にそして確実に積み上げていきましょう!

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