パンダネット初段vs初段の棋譜解説をしていきます。

 

布石解説

白4の小目は左下隅の白へ向かってシマリを打てる形のほうが良いでしょう。

なぜなら5手目では黒が先着するため、白のシマリを阻止できるからです。

左上隅の白はシマリを打てれば、右上隅の黒に向かって剣先を向けることができます。

しかし先に黒5と打たれると白が挟めば後方(右上隅)に黒石が待っていますし、ツケ引きではお互いの勢力が睨み合っている上辺を黒に占められてしまいます。

もし白4の小目が左下隅の白へ向かってシマリを打てる形であれば、黒がカカリを急ぐことはありません。

なぜなら黒のカカリに白が挟めば後方(左下隅)に白石が待っていますし、ツケ引きでも左辺の白の勢力圏内ならまだ黒石を攻める手段が残されています。

布石の4手をテキトーに考えている人と小目の向きや星との組み合わせまでしっかり考えている人では、その後の全局的な捉え方がまるで違ってきます。

なるべく一手一手に意味を持たせたほうが、一局を一連の流れとして捉えることができるでしょう。

黒9のカケツギも同様です。なぜカタツギに打たないのか自分なりに意味づけしながら打つと良いでしょう。

黒9,11と打つのは白12の弱点がネックになります。

しかし白12と打たせて黒13~19まで打つ予定であるのなら、黒9のカケツギは立派な作戦になります。

囲碁ではすべての着手が一長一短であり、その組み合わせ次第で良くも悪くもなります。

例えば、最初にお話しした白4の小目の向きにしても一長一短です。

つまり黒5~11,13~19と上辺を黒に打たせる代わりに右下隅の黒へ白12とカカリを打ちます。

もし白4の小目の向きが左下隅のほうだったら、今度は左上隅のカカリを急がずに黒は右下隅のシマリや中国流に構えてくるかもしれません。

部分的な良し悪しを考えながら、全局的な組み合わせを考えていく。

これが囲碁の醍醐味であり、思考(至高)のゲームたる所以です。

白20の高ガカリに対して、一番厳しい黒21の一間高バサミで応戦してきました。

黒21のハサミはカカリの白一子に対しては一番厳しい打ち方です。

この「厳しい」という表現も一長一短の思考の種になります。

囲碁において「厳しい」とは死活に関わる着手のことを指します。

つまりカカリの白一子の生き死にが危ない、ということです。

生き死にが危ないから、白一子を守らないといけませんか?

部分的にはそうかもしれませんが、全局的にはそうではありません。

黒のハサミが「一間」と狭いので、白は一子を小さく捨て石にする選択肢があります。

もし黒のハサミが「三間」と広いのであれば、白は簡単に一子を捨てるわけにはいきません。

また黒のハサミが「三間」と広いのであれば、黒が簡単に白一子を取ることができないため逆に手間をかけて取らせることも考えられます。

部分と全局、石と地のバランスを考えながら、一長一短の押し問答を続けてみましょう。

きっと布石を打つ手のスピードもゆっくりになってくるはずです。

白22~44まで白は右下隅で治まりました。

そして白46と左右の黒石を分断している白の種石を動き出しました。

白は一連の進行を選んだ以上、その判断に見合う中盤の打ち方を考えなくてはいけません。

囲碁において一長一短がもっとも顕著であるのが、布石の段階です。

中盤以降は布石で選んだ道筋に沿って、矛盾がないか無理がないかなど整合性を取りながら打っていきます。

はたして白46の動き出しはどうだったのでしょうか?

中盤解説

黒47に対して白48の両ノゾキの狙いは悪くありません。

しかし白52~56が余計な二子取りです。

右下隅の白石が生きている以上、黒二子を取る価値は激減しています。

そのせいで黒57,59と中央の白石を狙われながら右上一帯の黒模様が大きくなってきました。

白60の三々入りは当然の一手のようですが、実は前に打った手との整合性が取れていません。

黒61,63と中央の白石を追求したのが、この碁の決め手になりました。

白64,66に押してとりあえず守ったふりだけしておいて、右上隅に白68と連打します。

しかし黒は右上隅を受けずにまたしても中央の白石を黒69と追及してきます。

黒69~87まで中央の白石が黒に取られてしまいました。

これでは、序盤の白30~46までの中央の種石を動き出した白の意図と合致していません。

そもそもなぜ白は黒石を分断している種石を動き出して行ったのでしょうか?

この「分断している種石を動き出す」という行為の意味をちゃんと理解している方がどれだけいるのか甚だ疑問です。

理屈は単純明快です。

「石を連絡すると地ができる」「石を分断されると地ができない」

この2つが連絡と切断の基本であり、すべてになります。

「黒石を連絡すると黒地ができる」「白石を連絡すると白地ができる」とここまではよいでしょう。

問題は「黒石を分断すると黒地ができない」「白石を分断すると白地ができない」です。

皆さんはちゃんとこの事実を認識しながら相手の石を切っていますか?

白30と種石を動き出したのは、黒地を邪魔するために他なりません。

白の種石を黒にゲタで取られると、黒石がつながって周辺に黒模様(黒地)ができてしまうのです。

だからこそ、白30~46まで中央にあぐらをかいて黒模様をけん制しました。

その中央の白石を黒87まで取られてしまっては元も子もないでしょう。

結局、白石を取って中央に黒地ができてしまったのです。

白30の場面では他の方法を取ることもできました。

白30のとき白は下辺の星下に打ちます。

次に黒は種石である白一子をゲタに抱えます。

そして白は右上隅の黒にカカリを打ちます。

黒が低い一間バサミなら白は三々に入ります。

以下、黒はどちらに押さえても中央を黒模様にすることができます。

【碁盤の「」設定から「Edit mode」をチェックすることで「検討」することができます】

このような変化を辿れば、黒に中央の模様(地)を譲って打つこともできました。

相手の石を分断して、分断した種石を助けて打つのはなぜでしょうか?

答えは「相手に地を作らせない、邪魔するため」です。

囲碁は地を作るだけではなく、地を作らせないように打つゲームです。

地を作らせないためには「消し・荒らし」のようなわかりやすい手段だけではなく、一見してわかりずらい「切り」もまた有効な手段の一つなのです。

白56,60,68の三手が欲張りだったために、白は中央の守りがおろそかになり過ぎました。

黒87以降まだ勝負は続きますが、いったん流れを引き戻さないと白に勝機はありません。

終盤解説

白88~104まで下辺から左下隅を白地にできたのは決して小さくありません。

ただし黒89~105まで中央の黒模様もさらに厚みを増すことができたので、お互いに一長一短です。

白106となるべく黒模様を消すように打っていますが、黒107と分断されては堪りません。

黒107~121まで白106の一子を飲み込んでしまいました。

ちなみに黒107の分断はこの場合「黒地を作るため」になります。

すなわち「白地を作らせない」から「白に眼を作らせない」を経て「黒地を作る」になります。

いわゆる「攻め」も同様の理屈で成り立っています。

攻めながら「相手に地を作らせない」もっと厳しく「相手に眼を作らせない」そして「相手の石を取って地にする」となります。

先ほどの白30の動き出しでは「左右の黒に眼を作らせない」という厳しい攻めまでは望めませんでした。

つまり分断、攻めにも段階があります。

より価値のある分断、攻めを打つことが肝要であるのは言わずもがなでしょう。

黒にとって唯一、黒127,129の分断が失敗に終わりました。

本当は黒127の厳しい切りは成立するのですが、黒は最後まで読み切れず黒131~135まで仕方なく妥協しました。

もちろん白石を分断して取ろうとしていたのですから、黒127~135までの一連の流れは間違いなく黒の失敗です。

その後、お互いにミスをしながらも形勢には大きく響かずに終局へと向かいました。

結果は黒の8目半勝ちです。

総評

白は布石での配慮がいまひとつ欠けていました。

黒模様が自然と形成されていくのに対して、白の対応は行き当たりばったりでした。

まず白12~18の荒らしを打つタイミングが早すぎます。

いくら白が先手で打てるとはいえ、序盤早々に立派な厚みを与えてしまってはいけません。

右下隅へのカカリも一間高ガカリではなく、大ゲイマガカリで右辺を目指すとよかったかもしれません。

白20で大ゲイマガカリにしても黒は一間バサミで追及してくるかもしれませんが、一間高ガカリよりもいくらか余裕が持てるでしょう。

そして白30ではすぐに種石を動かずに、自然な流れで布石を打っているほうが普通です。

「1に空き隅、2にカカリ、3にシマリ」と言いますから、まだカカリやシマリが残っているうちは戦いを急ぐ必要はありません。

どこに黒地ができて白地ができるのかまだ未確定なわけですから、慌てずにしっかりと布石を打っていればよいのです。

皆さんも一長一短をじっくり考えながら布石を組み立て、それに見合った中盤の戦いを心がけてみましょう。

初段の棋譜を解説します!【三局目】

初段の棋譜を解説します!【一局目】