パンダネット初段vs初段の棋譜解説をしていきます。

 

布石解説

黒1,3,5の中国流に対して、白も同じく左辺を中国流に構えました。

黒7と上辺に向かうより、黒は下辺の星に打ったほうがよいでしょう。

中国流は「小目のシマリ」を省いて隅を囲ってしまおうという作戦です。

そのため「小目」を中心として布石を組み立てていくのが基本となります。

とはいえ白8で下辺の星へ向かうのは「真似碁」になり、天元が模様の必争点になります。

白はどう足掻いても先番の黒より1手遅れてしまうので、模様の広げ合いでは勝つことができません。

白8のツメに黒9と下辺に打たれて、先に白10と右下隅へ入っていくしかありません。

上辺は黒7と白8を交換した形になっていますが、これはどちらが得なのか微妙なところです。

というのも右上隅の星に対して、左上隅は小目になっています。

白8と詰めたことで左上隅のほうが囲いやすくなっており、一概に上辺の「センターライン」を占めた黒が有利というわけではないでしょう。

白10のカカリに黒11~15は中国流の定石のような手順です。

ここは白16と狭くてもヒラキを打つのが肝心であり、少なくとも一眼を確保することができます。

黒17のトビは「低い中国流」のときに有効な打ち方となります。

高い中国流の場合では、次に二線のスベリを打たれて攻めが甘すぎます。

黒17ではコスミツケとノビを換わっておくべきでしょう。

そして今度は下辺ではなく、右辺から一間トビします。

実戦は白18のツケから白20とフクラミを打ちましたが、どうにも白の打ち方はスマートではありません。

黒21のアテに白22とツグのは「論外」です。

有段者が「空き三角」や「陣笠」などの愚形に甘んじていてはいけません。

黒21のアテには白23とアテ返す一手になります。

黒22の抜きには中央からアタリを打ちます。

黒のツギに白P-8(15-十二)とツイで中央へ頭を出します。

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実戦のように白22と愚形にツグのは、黒21,23と打たれて眼形も中央への進出も阻まれています。

白24のツケ~白30のタケフまで何とか中央に頭を出したものの、あまりよい打ち方とは言えないでしょう。

黒31のケイマは逃せない模様の必争点になります。

黒32、白31となるのは、左辺~中央にかけて白模様が大きくなってきます。

白32の三々入りには細心の注意を要します。

隅で生きられるのは仕方ないとして、どちらが「先手」を取るのかによって今後の展開が変わります。

黒は先手を取れる定石を選択すべきでしょう。

まず右辺の厚みよりも上辺の黒一子のほうが弱いので、黒33では上辺側からオサエを打ちます。

白の這いには、ハネずに黙ってノビておきましょう。

次に白が手を抜くと、黒はオサエて白石を取れています。

白がもう一本這ったら、そこで1つハネを利かしましょう。

今度も手を抜くと死んでしまいますから、白はハネ返して受けざるを得ません。

右上隅は白の三々入りからここまで、黒の先手でひと段落させます。

それから左上隅のカカリ、または左下隅(左辺側)のカカリに向かいます。

実戦は黒33と強いほう(右辺側)からオサエを打ってしまいました。

すると上辺の黒一子と切り離されないように、黒35~39まで後手でも連絡せざるを得ません。

白40と左下隅に先着されたばかりではなく、右上隅と右辺の厚みが「凝り形(重複)」になっています。

右上隅のワカレによって、形勢はあっという間に白が有利となりました。

中盤解説

この碁に限り、黒41のサガリから黒43,45のハネツギを利かす必然性はあります。

もう右上一帯は「終わっている場所」なので、ヨセにおける両先手を打つのは早い段階でも構わないでしょう。

黒47と「辺」に入ったのは失着であり、ここから先の展開を考えるなら「敗着」と言っても過言ではありません。

白10のカカリ、白32の三々入りを見てもわかるように、白は「隅」を荒らしています。

それに対して、黒は「辺」を消しているだけに過ぎません。

白48のツメに黒49~59まで、黒が左辺に入っている間に白は左上隅と左下隅の両方を打っています。

白60の利かしに黒61と受けるのは、形勢をよくわかっていない証拠です。

地合いは断然白が有利ですから、黒は何としてもひと波乱起こしたい立場なのです。

黒としては右下隅の白石に寄り付きたいところですが、あいにく最低限の眼形を確保して生きています。

黒は左辺の入り方が甘かったため、自ら局面を収束させてしまいました。

黒49では中央に堂々と一間トビを打つべきです。

そして左上隅のカカリ、左下隅C-4(3-十六)のツケを見合いにします。

とにかく黒は形勢判断が甘く、右上隅のワカレで流れが変わってしまったことに気づいていません。

右下隅の競り合いで功を奏した印象を引きずったまま打っています。

プロ棋士は形勢判断を一手ごとに行うくらい局面の変化に敏感です。

級位者はもとより、有段者の方も形勢判断をしている方は稀でしょう。

とはいえ、まったくやっていないとも言えません。

だいたい「する」タイミングは決まっています。

多くの方は大石を取られてから、ようやく盤上全体の状況を把握しようとします。

級位者の方に至っては、負けが確定してやっと打つ手が止まるといった感じです。

調子が良いときは誰しも快調に打ち進めます。

そのこと自体は悪くありませんが、潮目の変化を敏感に察知する嗅覚を身につけなくてはいけません。

さもなくば、終わっている碁を亡霊のように打ち続けることになってしまいます。

白62~70まで、この碁はすでに終わっています。

ここから逆転するのは至難の技でしょう。

それくらい右上隅の三々入りと左辺の入り方は一局の明暗を分けました。

終盤解説

黒71の三々入りは黒にとって最後の狙いであり、逆転への希望でしょう。

白70では手堅く隅をコスミで守っている打ち方もありました。

白70と一間トビしたことによって、黒71と三々入りした黒石を中央に追い出して取ることができます。

しかし勝勢である白がリスクを負ってまで三々入りした黒石を取りに行く必要はありません。

どのみち黒は無条件では生きられませんから、白72~78まで白はコウのフリカワリを目指しておいて十分でしょう。

白84のツギはいけません。

黒85,87のハネツギで黒の無条件生きを許してしまいます。

もっとも黒が左下隅を眼2つで生きたところで、何ら大勢に影響はありません。

白は左下隅の黒石を生かすのであれば、白78のアタリを打たずに他へ先着するほうがよかったでしょう。

どのみち白は勝ち戦ですから、どう打っても勝敗は揺るぎません。

黒はそれくらいの大差をすでに付けられてしまっています。

白88の抜きにツイで、左下隅の黒石は生きています。

ところが黒89とツケて、黒はまだコウ争いを続けます。

実際には左下隅が「生き残り」なだけで、白はコウを争う必要はありません。

白90では白92にノビておくのが、手厚く黒を封殺する好手でしょう。

黒91のハネから最低限の生きを確保できますが、左上隅で生きるのは当然ながら後手になります。

つまり白は左上隅と左下隅の取りを「見合い」にして、生きたほうにも最低限の眼形しか与えないというわけです。

実戦は功を焦って白90の抜きを急ぎました。

黒91~103まで、原形からは想像もつかないほど深く荒らすことに成功しました。

とはいえこれで完全に四隅・四辺を打ちきり、残るは中央の「大ヨセ」と辺の「小ヨセ」だけになります。

白104は「勝ちました」という宣言です。

黒は左上隅を先手で大きく荒らすことができたものの、逆転には程遠い形勢と言ってよいでしょう。

この碁は224手まで白の16目半勝ちとなりました。

総評

最終図を見てもわかるように、やはり隅を利用して地を囲うのが最も効率的でしょう。

黒は盤端を上手く活用できていないことが見て取れます。

あなたは「囲碁で一番よい勝ち方とは何か」がわかりますか?

答えは単純明快です。

「わかりやすく勝つこと」こそ、囲碁における最善の勝ち方なのです。

わかりやすく勝つには「手数を短く」打たなければなりません。

手数が増えるほど、局面は複雑になっていきます。

手数が短くなればなるほど「地の囲い合い」になります。

361の交点からなる盤上において、お互いの石以外はすべて「空間」です。

手数、すなわち石数が少なければ、必然的に囲う空間が大きくなるのは道理でしょう。

つまり「囲碁で一番よい勝ち方」とは「地の囲い合い」で勝つことに他なりません。

この碁はまさに白にとって理想的な勝ち方と言えます。

では、反対に「囲碁で一番悪い負け方」とはいったい何でしょうか?

これも答えは簡単です。

「わかりやすく負けること」こそ、囲碁における最悪の負け方なのです。

一番単純なのは「反則負け」でしょう。

2手打ち、着手禁止点、ハガシ等々、大会では時間切れ負けもあります。

これらを考慮せず「打ち方のみ」で考えるなら、やはり「囲い合い」で負けることが最もよくありません。

9路などの狭い盤上では、囲い合いがよく起こります。

「戦わずして勝つ」のが理想的な勝ち方であれば、「敵に背を向ける(戦わない)」のは絶対に避けたい負け方です。

よく強い人同士の碁では局面がどんどん複雑になっていきます。

あれは「理想的な勝ち方」を目指しているのではなく、「簡単に負けない打ち方」をしているわけです。

強くなればなるほど、簡単に勝てないのは承知しています。

だからこそ戦いを恐れず、不利になっても局面を打開できる状況にしておきます。

この碁では、黒が自ら戦う場所をなくしてしまいました。

左辺の戦いをもう少し工夫していれば、あっさり土俵を割ることもなかったでしょう。

それ以前に白も右上隅を三々入りしたのは、なかなか怖い打ち方です。

先手を取られて、左辺を打ち回されたら形勢不利なのは白のほうでした。

右上隅はカカリや辺の一子へのハサミなど、難しく打つ方法はいくらでもあります。

白が三々入りしたことにより、良くも悪くも局面が「わかりやすく」なっています。

その恩恵を受けたのがたまたま白だっただけで、展開次第では黒が圧勝していた可能性もあります。

戦うばかりが能ではありませんが、戦わないリスクも十分承知しておきましょう。

硬軟織り交ぜて、いろいろな碁を打ち分けることでリスクを最小限に抑えることができます。

勝つのは決して簡単ではないと理解しつつ、それでもより良い勝ち方を模索していきましょう。

碁を探求し続けていけば、局面や展開に応じた勝ち筋が自然と分かってくるはずです。

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