パンダネット初段vs初段の棋譜解説をしていきます。

 

布石解説

黒番、白番ともに二連星で落ち着いた布石です。

隅が星の場合は三々が弱点であり、カカリの石を容易に攻めることはできません。

黒5のカカリに白6と一間高バサミに攻めても、黒7~15まであっさり三々で生きてしまいます。

星の狙いはまさにこの「三々入り」の弱点を残すことにあります。

弱点があれば相手がそこを突いてくるのは自明ですから、対処もしやすいという利点があります。

特に星の場合は4-四と高い位置に構えているので、ほかの隅や辺と呼応しやすいのです。

もし最初の4手で両隅を三々に打ってみた場合を考えてみてください。

隅の三々と三々の間は13間幅あります。

隅が星と星の場合は11間幅になります。

加えて辺の星との連携を考えてみます。

隅の三々と辺の星の間は6間幅です。

隅の星と辺の星の間は5間幅です。

例えば黒が三連星に打ったとして、白は黒の5間幅の中では二間ビラキできません。

一路ずれて6間幅であれば、二間ビラキすることができます。

つまり三々や小目など石を盤端に寄せるほど、ほかの隅や辺との連携が取りづらくなり模様にしづらいのです。

対局に話を戻しましょう。

白6~22までは一連の流れで白の作戦です。

白はカカリの黒一子を攻めて盤端に潜らせて、右下隅のカカリでも白の厚みを背景に打っているので受けを強要しています。

白22と広げて黒に「入っていらっしゃい」と誘っています。

白の二連星は三々(盤端)に弱点を残して、その上で辺~中央を模様にする作戦でした。

では、黒の二連星はどういう意図があったのでしょうか?

黒の二連星も部分的な打ち方ではなく、全局的な視点を持っています。

すなわち、先手です。小目のシマリなど部分的に力を入れると、大勢に遅れてしまいます。

黒は三連星などの模様にこだわらず、星・星と一手で隅を済ませてどんどん足早に展開しようとしています。

黒23の五線の打ち込み(消し)は黒の着想を顕著に表しています。

白に下辺を囲わせて、適当に利かしたら先手で他へ展開しようとしています。

黒は初めから足早に展開していくための二連星です。

白は黒石を攻めながら模様を拡大していく二連星です。

つまり実利vs模様の碁になっています。

白24のボウシから攻めたのは白の一連の流れに沿ったものです。

黒25のツケから利かしていきます。

黒37のハネまで白に下辺を囲わせれば、黒の思惑通りでしょう。

白38と分断したのは中央の黒石への攻めを残すためです。

また中央と右下隅の黒石が連絡してしまうと、右辺が黒の大模様になりかねません。

白の目的はあくまでも黒石を攻めることですから、黒模様へ突入して攻められる展開にはしたくありません。

中盤解説

白40は少々強引ですが、右下隅の黒石を攻める狙いは伝わってきます。

黒41の詰めは右辺の白一子のほうが弱いという主張で、正しい判断でしょう。

白42と右下隅を封鎖してあくまでも黒石を攻めている立場を強調している白ですが、黒43,45と出切られると苦しいのは白石のほうです。

白46,48と右辺の形を整えます。

黒49には白50,52と押してやむなく中央と右下隅の黒石への攻めは諦めました。

しかし白54と今度は右上隅の黒石を標的にしています。

白は良くも悪くも攻め主体でこの碁を打っています。

黒は攻められているので、なかなか先手を取ることができません。

とはいえ、しっかり実利を得ながら局面が進んでいますから黒としては不満なしの展開でしょう。

黒55~69まで何とも評価しづらい微妙な進行ですが、とりあえずお互いに満足なワカレと見ておきましょう。

白は大ゲイマの黒一子を切り離して取ったことで満足できます。

黒は右上隅~右辺に向かって作る予定だった黒地が、右上隅~上辺に向かう黒地になっただけのことです。

加えて白の厚み(壁)が向き合っていて、白地の効率が非常に悪いのも黒にとって満足できる理由になります。

白70のスベリはヨセの手段であり、打つのはまだ早いでしょう。

黒71と受ける必要もありません。まだ左上一帯に広大な土地が残っています。

中央の黒石を攻めることができないので、白72の分断も極めて小さい手になります。

左下隅の黒石、中央の黒石、下辺の白石は生きていて、それぞれ地を持っています。

白72はすでに生きている石(終戦した場所)のすぐ近くに打っているため価値が小さいのです。

黒73も生きている黒石、白石の接点に打っていますから、本来であればヨセの手段になります。

白74と受ける必要はありません。

せっかく黒69までひと段落した時点で白が先手を持っていたのに、黒75と先着されては足早に展開したい黒の思惑通りでしょう。

白76のカケはやはり中央から利かして、白模様で勝負といった打ち方ではないでしょうか。

黒は黙って上辺を受けていて問題なさそうです。

または三々に潜り込んで、左上隅を黒地にしてもよいでしょう。

この碁はすでに中央が終局している状態にあるので、中央に価値を求めることができません。

それなのに黒77,79と中央を争いに行くのは部分的なことしか見えておらず、全体の価値判断ができていません。

白76と連絡の薄い手を打ってきたら、黒77,79と突破したくなる。部分的には確かにその通りです。

しかし相手の石を切るという行為は「相手に地を作らせない」ことに他なりません。

左辺には黒石の剣先が出ていて、中央の黒石も生きています。

これでは左上隅の星と白76が連絡したところで、左辺~中央に白地は見込めません。

ゆえに白石をそもそも分断する必然性が見当たらないのです。

黒81~99まで白石を分断した割には何も起きていません。

上辺がつながって黒地ができていますが、白76のカケに受けていれば元々できていた黒地です。

それよりも白90まで左辺にできた白地が黒にとっては痛い誤算です。

黒地ができたプラスよりも白地ができたプラスのほうが大きいでしょう。

地というのはスマートにできるのがもっとも嬉しい作り方です。

白76には素直に受けて上辺~左上隅を黒地にします。

次に白が左辺を白模様にしてきたら、黒はあえて左辺を白に囲わせるように打ちます。

すると黒は左上隅、中央、左下隅から順番にヨセていくと、簡単に勝勢の碁形に持っていけます。

白は左辺を模様にしても、黒が入って来ずに外側から打ってくれば守らざるを得ません。

つまり左辺を囲うのは白がすべて後手です。黒が先手でヨセることができれば、あっという間に勝負がつきます。

しかし実際にできた白90までの白地は非常に効率がよく、ヨセもなかなか利いてくれません。

黒75と左上一帯に先着できた黒でしたが、黒99まで戦果を上げたとは言えずせっかくのチャンスを逸してしまいました。

終盤解説

白100~104まで黒地を分断しようとするのは、白の打ち過ぎです。

黒105で入り込んできた白石を切っていれば、白三子が御用になっていました。

白106とツグことができて黒地の分断に成功したことで、終盤の形勢は混沌としてきました。

結局、上辺を白に分断されては左上一帯の地合いはどちらが勝るのかわかりません。

さらに黒地を分断されたことで、左右の黒地に白からヨセが利きやすくなっています。

布石~中盤にかけての白の攻め主体の打ち方は、若干空振りしている節がありました。

ところがヨセに入っても白の攻めの姿勢は変わっていません。

ヨセで攻めるのは石ではなく、地です。

石を取りますよ、取りますよという中盤の攻めは難しく、空振りしやすいものです。

しかし地を減らしますよ、減らしますよという終盤の攻めはわかりやすく、先手を取りやすいものです。

ヨセでは特に自分の地を守るよりも、相手の地を減らすほうが得策です。

なぜならそのほうが先手を取りやすく、次々とヨセを打ちやすいからです。

この碁は終わってみれば盤面1目差、結果は白の5目半勝ちとなりました。

総評

黒は一局を通して目立った悪手もなく、失着も敗着もありませんでした。

布石~中盤にかけては黒の思惑通りに事を運んでおり、決して悪くない碁でした。

とはいえ黒は左上一帯の攻防で成果を上げられず、黒105では切りを逃して白106のツギを許してしまいました。

その後の黒はいわゆる「緩着・緩手」によって白にじりじり差を付けられてしまいました。

囲碁では悪手や失着が致命的な敗着になり得るため、できるだけ失敗しないように無難な手を選ぶ方がいます。

しかし級位者の頃ならまだしも有段者レベルになると、悪手や敗着を打たなくても緩手によって負けてしまうことがよくあります。

100メートル競技で12.0秒で走れる人は小中学生に負けることはありません。

足を挫いたり、転ばなければ勝てるので、万全を期して12.5秒くらいで安全に走りきればよいでしょう。

しかし相手が高校大学生になると容易に緩めることはできません。

全力を以てしても良い勝負であるのなら、勝つためにリスクを承知で自己タイム更新を狙うはずです。

このように手を緩めたり、リスクを承知で賭けに出たりするのは囲碁では常に意識して打つものです。

つまり形勢判断が非常に大切であるということになります。

この碁では布石~中盤まで黒の打ち方は悪くなかったので、その印象のまま終盤のヨセで緩んでしまいました。

逆に白は布石~中盤まで思うように行かなかったので、その印象のまま終盤のヨセをリスクを承知で頑張っていました。

白100~104までの無理手を通して白106とツグことができたので、上辺のヨセを存分に打つことができました。

黒としてはやはりヨセに入る前に形勢判断をして、状況が変わってしまったことをいち早く察知することが肝心だったでしょう。

この碁は一局を通してお互いに目立った悪手もなく、一貫した作戦を立てていてすごく好感の持てる内容でした。

勝負、勝負と行く碁も面白いですが、大崩れしない最後まで気が抜けない碁もまたよいものです。

初段の棋譜を解説します!【四局目】

初段の棋譜を解説します!【二局目】