パンダネット初段vs初段の棋譜解説をしていきます。

 

布石解説

黒1,3の両小目は有力な布石です。

次に黒5のシマリを打てば、両ジマリを防ぐ白6のカカリを誘導することができます。

もし白6で他へ打ってくれば、黒は両ジマリに打てばよいでしょう。

囲碁では3手読みが基本の考え方になっています。

つまり黒Aと打てば、白Bと打ってくるだろうと予測を立てます。

白Bに対しては、黒Cと打つ予定で行こうという読みが成り立ちます。

なぜ黒Aと打てば、白Bと打ってくるだろうと予測が立てられるのでしょうか?

それは今一番価値の高い黒Aと打てば、次に価値の高い白Bと打ってくるだろうと考えているからです。

そして白Bの次に価値のある黒Cに打つのが自然な流れになります。

もし白Bで他に打ってくるなら、迷わずに黒Bと打てばよいだけのことです。

囲碁では自分なりにまず価値判断、すなわち形勢判断をします。

その判断が正しいかどうかは問題ではありません。

自分の形勢判断を信じて次の一手を考えるのが読みの基本になります。

黒7のツケに白8とオサエを打ってくるだろうと予測を立てます。

白8とオサエてくれば、白9にヒキを打とうという読み筋です。

もし白8で他へ打ってくれば、黒8のノビもしくはQ-6(16-十四)のハネに打つだけです。

白が雪崩定石を選んできたときに、結局黒8の地点にノビるかQ-6(16-十四)の地点にハネるかのどちらかです。

石がぶつかったときは多少省けない着手も出てきますが、基本的な考え方は同じです。

黒9のヒキで黒10と切れば、白9とアテて突破すればよいだけです。

黒11の受けを省けば、白は隅の黒三子にツケて外勢を築きます。

着点こそ少しずれることがあっても、やはり基本の考え方は変わりません。

自分の価値判断を信じて、それに基づいて読みを組み立てればよいのです。

「それで上手くいかなかったらどうするんですか?」と聞くなら、それはあなたの形勢判断(価値判断)がまだまだ甘いということでしょう。

決して、三手読みができないわけではありません。

相手がどこに打つのかわからないのは皆同じです。

そもそも有段者・高段者の方は初心者・初級者の方が打つ突拍子もない手を読むことなどできません。

いわゆる「勝手読み」をしているだけです。

ただし、その勝手読みが級位者の方より優れていれば立派な有段者でしょう。

よく「あなたは何手先まで読むことができますか?」という質問をされることがあります。

その昔、当時タイトルを取ったある棋士が「ひと目500手読める」と豪語した逸話があります。

その一方で「次の一手もわかりません」と答えた一流棋士の先生もいました。

これはどちらの言い分も正しいでしょう。

正解など誰にもわかりません。

分かるとすれば、部分的な手筋・詰碁や小ヨセくらいのものです。

わからないなりに一流棋士もアマチュアも皆「勝手読み」をしているわけです。

勝手読みとは通常、悪い意味で使われることが多いでしょう。

しかし質の低い勝手読みが悪いのであって、質の高い勝手読みなら良いのです。

対局に話を戻しましょう。

黒13までの進行は先番である黒にとって、一手目から読めていたとしても何ら不思議ではありません。

黒の両ジマリを防ぐ白6のカカリにツケ引き定石を打ち、白12まで予測しておいて黒13の詰めです。

白6が一間高ガカリではなく、小ゲイマガカリならどうだったのでしょうか?

あるいは白が雪崩定石を選んできていたら?白12を一路高く打っていたらどうだったのでしょうか?

そういう事態はあらかじめ研究しておきます。

もちろん誰かと研究するならまだしも、一人で考えるならそれは勝手読みになります。

勝手読みの質が高いのか、低いのかは実戦で確かめればよいでしょう。

実戦を積めば、積むほど経験値が上がっていきます。

黒13の詰めに白14の手抜きも想定内です。

白が右辺を受ければ、黒が他方へ先着します。

白14と右辺を手抜きすれば、黒15の打ち込みを決行する予定だったのでしょう。

白16の上ツケに黒17のぶつかりは、白18と押さえられて「二目の頭、見ずハネよ」の形にされています。

黒17は筋が悪いので、S-8(18-十二)にサガリを打つのがこの場合の形になります。

【碁盤の「」設定から「Displaycoordinates」をチェックすることで「座標」が出てきます】

【碁盤の「≡」設定から「Edit mode」をチェックすることで「検討」することができます】

白20の切りも白22のアテも成立するかは非常に微妙なところですが、黒21,23と素直に受けてくれれば白24とツイで白は万々歳です。

黒は右辺を突破されて「裂かれ形」になっています。

裂かれ形になって良いことはほとんどありません。

※ごく一部例外はあるが、その先まで読めていないと打ってはいけない。

黒25~35まで黒の予定の行動とは思えませんし、白36の好点に先着されてしまいました。

白14の先着を許す代わりに、黒13,15の連打で右辺の白石をいじめてやろうという黒の読み筋でした。

しかし白24のツギを打たれて右辺の白が強くなってしまったばかりか、黒は後手を引いて白36と打たれてしまいました。

上辺だけではなく下辺への先着も許したことになります。

中盤解説

黒37と下辺の白一子と右辺の白石を分断したのは半ば意地のようなものです。

まだまだ左辺を中心に布石の要所が残っていますが、普通に打っていたのでは黒は旗色が悪いと見たのでしょう。

近年ではAI主流の碁が多い中、気持ちで打つのは理に適っていません。

しかし人間の碁は一貫性を重視するほうが上手くいくことが多いのも事実です。

形の整ってしまった右辺の白石にどれだけ攻めが利くのかわかりませんが、白14,36と二手も手抜きされた以上は追及するしかないのかもしれません。

白38~42と右辺での戦いに受けて立ったのは白も良い判断です。

右辺の白石は形が整っており、弱石とは思えません。

白は黒石に反撃しながら右辺で互角の競り合いをしておけば、全局的な優位を保つことができるでしょう。

黒43に白44~50と上(中央)から応じたのも、白の好判断です。

しかし白56とハザマを空けて打ってしまったのは、少々軽率でした。

黒二子に対して右辺の白石のほうが相対的に強いわけですから、白56では先に白58と形を整えておいて白の優位は盤石でした。

白64もおかしな手ですが、黒65と受けてくれればコウ材を減らしただけで済みました。

黒67まですっかり右辺の白石の眼形がなくなってしまいましたが、中央の黒石も眼形がなく弱いので互角の競り合いと見てよいでしょう。

右辺での戦いが互角である以上、序盤に白14,36の二手を打てている白が有利です。

白80の放り込みは余計な一手です。白は黒石を狙いすぎています。

それに対して、黒85の眼形作りも余計な一手です。

白88の切りも黒石を狙いすぎていて、蛇足と言ってよいでしょう。

白は右辺の大石をしっかり捌けばよいわけですから、勝負を急ぐのは得策ではありません。

黒101まで切ってノビた白三子を取られて、右辺の白石がまた怪しくなっています。

白88では白86のマゲに続いて、押し切っていれば手厚かったでしょう。

白102~122まで右辺で始まった争いが左辺まで波及してきています。

これは黒の望む展開であって、白の望む展開ではありません。

白としては早々に右辺を捌いて碁盤の左半分で勝負すれば、右半分に偏っている黒に比べて有利な戦いをすることができたでしょう。

しかし右辺での競り合いが左辺まで来たということは、まだ右辺の白石は眼形を持てずに不安定だということです。

これでは左辺方面への悪影響は必至です。

途中で黒107のツケに白108と打ったのは、黒109と出られて裂かれ形の悪形です。

「裂かれ形は最悪である」という認識を強く持たなくてはいけません。

白108では少なくとも白112に打っておけば、黒109、白110となって裂かれ形にはならないでしょう。

終盤解説

黒123のカカリはすでに大ヨセの手になっています。

もちろんまだ遠巻きに右辺~中央にかけての白の大石を狙っています。

黒131は中央の白石への攻めと左辺の黒地化を両にらみにした一石二鳥の好手です。

この一手で形勢は黒に傾きました。

白136は地合いで負けないように頑張った打ち方です。

しかし黒137~141まで中央の白石には一眼しかなく、絶体絶命の大ピンチです。

白150のときすぐに黒151と切らずに黒152とマゲておけば、中央の白石が凌ぎ切れず黒は見事に大石を仕留めていたでしょう。

白152~170まで眼あり眼なしで白が左辺の黒石を逆に取ってしまいました。

こうなってしまっては、これ以上打っても逆転不可能です。

この碁は終局まで打たれて、結果は白の8目半勝ちとなりました。

黒255手の切りであわや事件かと思われましたが、白256が冷静な受けで白266のアタリがあっては何も起こりません。

勝つ見込みがなくなった時点で投了するのもまた芸のうちです。

総評

この碁は黒が右辺の白石を狙いすぎてやや単調な打ち方になってしまいました。

白も白で黒の攻めに付き合いすぎたため、終盤まできて大石全体が頓死寸前まで追い込まれたのはよくありません。

黒の反省点としては黒15の打ち込みを急がずにとりあえず布石を打つことです。

仮に右辺の白を仕留めたとしても、布石の幅としてはさほど大きくありません。

石を取ることがより効果的になるのは、フリカワリの利く大場がなくなったときです。

まだ大場が残っているうちは、一か所を潰しても全局的に得しているのかどうかわかりません。

そういった意味では、白の反省点も右辺にこだわり過ぎたことです。

捨てられなくなるほど大きな石になっては、黒からの利き筋が増えてしまいます。

利き筋が増えるということは、それだけ打つ手が不自由になってしまうでしょう。

ちなみに白54では放り込みからツグのが手筋です。

すると黒のダメヅマリが一つ違いますから、後の白72,88がより効果的になりました。

ダメヅマリ一つの違いで、その先の結果が大きく異なることはよくあります。

雑に打つことは誰にでもできますが、一手一手を光らせて打つことは誰にでもできることではありません。

ダメヅマリに導く放り込み一つ、また投了一つとっても囲碁では「芸のうち」です。

皆さんも一手一手を光らせて打てるようになると良いですね。

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