
「宝酒造杯で優勝するために必要なこと」について考察していきます。
発展する大会
宝酒造杯は前身の「協和発酵杯」を受け継ぎ、平成最後(令和最初)の今年で第12回大会を迎えます。
主要都市でしか開かれなかった地方予選も毎年ごとに増えていき、全国12カ所で開催される人気の大会となりました。
日程は下記のようになっています。
・京都大会 4月20日(土)
・岡山大会 5月11日(土)
・東京大会① 5月18日、19日(土、日)
・沖縄大会 6月1日(土)
・札幌大会 6月29日(土)
・仙台大会 7月15日(月・祝)
・横浜大会 9月7日(土)
・名古屋大会 9月28日、29日(土、日)
・大阪大会 10月13日(日)
・新潟大会 10月20日(日)
・東京大会② 11月3日(日・祝)
・福岡大会 11月16日(土)
・広島大会 12月8日(日)
東京大会は年に2回開かれ、2日間の日程のうちいずれかにしか参加できません。
各地区による参加制限はなく、どの大会にも何度でも参加することができます。
囲碁のアマチュア棋戦の地区予選では「通勤・通学」もしくは「在住」していなくては参加できない規定があります。
そうしなくては参加者の少ない「穴場」のような地区で代表になろうとする人が少なからず出てくるからです。
ちょうどオリンピックの代表になるために帰化するようなものですね。
しかし宝酒造杯は「どの大会にも制限なく参加できる」としています。
つまり2回行われる東京大会を含めた「全13大会」に参加できるということです。
※2日間の日程が組まれているところは、いずれかの日にしか参加できません。
巷の噂では「全13大会に参加した人は全国大会に招待される」なんて話も聞きます。
もちろん選手としてではなく、「よかったら見ていってね」という扱いでしょう。
実際に「全国大会」出場を目指して、各地の予選に軒並み参加した方もいるみたいです。
私も友人に誘われて沖縄大会に出向いたことがあります。
観光がてら地方予選に参加する方もいれば、本気で「優勝」を狙って「ハシゴ」する方もいます。
このような多くの方に親しまれる大会になった2つの理由があります。
それは「子ども不在」であり「女性優遇」であることの2つの要因です。
囲碁界において「子ども」の力は絶大です。
はっきり言って、大会において大人を席巻するなど日常茶飯事です。
前身である「協和発酵杯」のときは未成年の子どもたちも参加することができました。
故に「子どもがいるから出るのは嫌」という層の大人たちを呼び込めなかったのです。
「何とも大人げない」と思われるかもしれませんが、やはり子どもに負けるのは想像以上に悔しいものです。
私も協和発酵杯の四段戦に出たときに女の子に2敗したのを未だに覚えています。
そのときは私も十代でしたが、同じくらいかと思っていた子が実は中学生と知って愕然としました。
囲碁に年齢はまったく関係ありません。
4歳で囲碁を始めて1年で二段、2年で六段になった子もいるくらいです。
そもそも「段級位別」の大会ですから、人それぞれ囲碁を始めた時期に関係なく同じくらいの棋力の人と当たります。
だから子どもだからといって何も気にすることはありません。
ところがそういう「くだらない」ことを気にしてしまうのが、大人の「大人げない」ところでしょう。
実際に段級位認定大会で子どもと当たって顔を真っ赤にしている人や目を白黒させている人など大勢見てきています。
そんな大人の「天敵」である子どもたちですが、宝酒造杯になってから参加できなくなりました。
よくよく考えれば、当たり前のことでしょう。
主催者の「宝酒造」がお酒を宣伝するための大会ですから、子どもを優遇する必要はありません。
それ以上に「未成年の飲酒」というリスクを考えれば、未成年者が参加できないのは時代の流れというべきでしょう。
さて、大会が盛んになったもう1つの理由に「女性優遇」があります。
宝酒造杯の大会規定には特典として次のように書かれています。
・女性の方が1,2勝した場合は女性敢闘賞を贈呈します。
・地区大会の各クラス1名ずつの優勝者と全13大会から各クラスの女性最上位者を、京都で開催の全国大会(ホテルグランヴィア京都)にご招待します。
つまり「持ち帰れるお酒」が男性よりも多く、全国大会への出場機会も女性の方が多いのです。
プロの棋戦に例えるなら「女流枠」といったところでしょうか。
先ほども申し上げたように、「段級位別」の大会において年齢も性別もまったく関係ありません。
とはいえ、囲碁界の競技人口を男女比で考えると明らかに男性のほうが多いのもまた事実です。
女性が活躍する機会が少なくなることで余計に女性参加者が減り、せっかくの大会も下火になってしまうでしょう。
そのため「女性優遇」は必須であり、それを実践している宝酒造杯が毎年ごとに盛んになっていくのも当然の結果です。
宝酒造杯の特徴をまとめると
・地区予選に参加制限がなく、どの大会にも参加できる
・子どもがいない
・女性を優遇している
このようになります。
「段級位別」の大会であるため、厳正に大会を運営する必要はありません。
なぜならボクシングの階級別のように体重(棋力)を測ることができないからです。
棋力を測定できない以上、相撲のような無差別級にしなくては公平とは言えません。
しかしそれでは、級位者が出場できる大会は認定大会だけになってしまいます。
その「地区」に住んでいる、または通勤・通学しているなどの制限を設けないところも素晴らしい取り組みです。
そこを厳密にすると、必ず「過疎」する地区が出てきてしまうでしょう。
参加者が少なくなれば、当然ながらその地区の大会は閉鎖せざるを得ません。
主要都市では優勝を狙えない人が地方に来ることで、本来なら参加者の少ない地区を活性化させることができます。
あえて参加条件を緩くすることで、全国12カ所で開催できる大会に成長したと言えるでしょう。
勝つための心得
前置きはこれくらいにして「優勝する」ためにはどうしたらよいのか考えていきましょう。
「段級位別」の大会であるため「優勝する」だけなら話は早いでしょう。
普段の実力より3つくらい落として出場すればよいのです。
3子も落とせば、地区予選どころか全国大会でも優勝できます。
しかしそういった「小細工」はやめておきましょう。
なぜなら小学生の運動会に中学生が参加するようなものだからです。
同級生に勝てないからといって、年下の子どもと本気で競い合うようなことはしないでしょう。
要するに「プライド」の問題です。
宝酒造杯では各クラスの優勝者を全国大会に招待しています。
もちろん会場までの交通費や宿泊費などを負担してくれます。
私は過去2回優勝して全国大会に出場しています。
しかし当時の東京予選を勝ち上がったものの、全国大会も日本棋院「東京本院」だったので何の恩恵も受けられませんでした。
現在は全国大会が「京都」で行われているので、地区予選を勝ち上がった全員が恩恵にあずかれます。
恩恵があるのは、何も優勝者ばかりではありません。
準優勝者や三位入賞者を始めとして、3勝や4勝した方にも成績に応じた「お酒」や「みりん」などのお土産が用意されています。
このような特典が多い大会のため「棋力詐称」してでも勝ちに行く人が後を絶ちません。
これがただの「段級位認定大会」なら話は別です。
普段の棋力より2つも3つも落として出たところで、貰えるのは免状だけです。
「免状」とは「プライド」ですから、プライドを捨ててまで出る意味はまったくありません。
「賞品」があるからこそ、プライドを度外視にする人が出てくるのです。
あなたは「優勝する」または「勝つ」ために棋力を下げようとしていませんか?
ちなみに前回「全敗」した方や「1勝」しかできなかった方は無理せず出場クラスを落としましょう。
チャレンジすることも素晴らしいのですが、より適正な棋力で出たほうが相手のためにもなります。
棋力に関して、大会規定には次のように記されています。
棋力相応のクラスにお申し込み下さい。
前年度参加クラス(参加級)で3勝以上された方は本年度は前年同クラス(参加級)以上に、優勝された方は1クラス以上上位クラスにお申し込み下さい。
事務局でも受付時に申し込みクラスの妥当性を確認させていただきます。
実力を大幅に下回るクラスでの優勝は、後日失効となる場合(全国大会出場取り消し)がありますので予めご了承ください。
つまり過去に日本棋院主催の大会に出ていたり、免状を持っていれば「棋力の妥当性を測れますよ」と言っています。
しかし実際にはそこまで厳密にデータと照らし合わせるようなことはしないでしょう。
あくまでも「イベント」ですから、参加者全員が紳士淑女であることが前提となっています。
1つか2つくらい下げたところで咎められることはありません。
ただし「優勝する」または「勝つ」ためには、強い「精神力」が必要不可欠でしょう。
棋力を下げてまで勝とうとしても、そう上手く勝てるものではないのです。
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宝酒造杯を勝ち抜くためには「時間」を最大限活用することが肝要です。
対局時計を使い慣れていない方はまず早急に対策を考えましょう。
当日の本番で何とかしようとしても、慣れないことに戸惑って盤上の戦いどころではなくなります。
「布石」「中盤」「ヨセ」「予備」といった時間配分を決めておくことも重要です。
そもそも「布石」「中盤」「ヨセ」をちゃんと使い分けられていますか?
適当に隅・辺から打ち始めて、石がぶつかったら成り行き任せで、いつの間にか最後のほうという方も多いかもしれません。
一局の組み立てが曖昧な方は一度「並べ返し」して自分の碁を確認してみましょう。
ネット碁であれば棋譜のデータが残っていますから、どこまで「布石」でどこまで「中盤」なのかくらいは把握しておきましょう。
※詳しくはこちらをご覧ください。
大会へ向けて
大会で勝てない人の最大の特徴として、直近の「対局数」が圧倒的に足りていないパターンが多く見受けられます。
「トライ&エラー」による検証不足であり、失敗しても修正することができません。
逆に勝てる人の特徴とは「どんな場面でも戦える」ことです。
型にはまる人ほど、中盤以降の変化に対応できません。
「勝ちたい!」という気持ちの強い人は布石さえも自由に打ちまわすことができません。
勝敗に気持ちを圧迫されないためには「経験を積む」ことが必要不可欠なのです。
「書」をしたためるとき、一発で見事な「字」を書くことができますか?
普通の人なら100回書いてやっと2,3回ほど満足のいく「字」を書けるのではないでしょうか?
ましてや本番の一発勝負で「満足できる碁」を打つのは至難の技でしょう。
とはいえ、対局数を重ねることで「失敗」しても修正できる力が身に付いてきます。
そして失敗を恐れなければ、布石を自由に打ちまわすことも自然にできるはずです。
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勝ち上がるためには普段から対局を数多くこなすことが欠かせません。
また「心・技・体」の在り方によっても勝敗を大きく左右されます。
気持ちで後れを取ってはいけませんし、培ってきた技術にも自信を持たなくてはいけません。
宝酒造杯では5局打つことになるので、丸一日かけて打ち続けるだけの体力も要求されます。
これら3つの要素を満たすにはぶっつけ本番で臨むのではなく、普段からの心がけを大切にすることです。
大会に参加するのは、定年退職されて悠々自適に暮らしている方や現役でバリバリ仕事をしている方まで様々です。
とても普段の生活の中で対局をする時間など取れないかもしれません。
そんな方には「ネット碁」で対戦するのが一番合っています。
有料・無料を問わずにとにかく対局機会を増やすことが重要なのです。
「時間の取れない」方は9路盤
「対局数を重ねたい」方は13路盤
「本番に向けて調整した」方は19路盤
といったようにそれぞれの状況に合った盤の大きさで打つとよいでしょう。
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対局ばかりでは培ってきた技術の「アウトプット」しかできません。
囲碁は知識を「インプット」することが必須になります。
大会へ向けて、よりたくさんの棋書を読みましょう。
簡単な手筋・死活の本だけではなく、布石や定石の本なども積極的に読むとよいでしょう。
盤上に相対したときに判断材料はできるだけ多いに越したことはありません。
「必勝〇〇」や「〇〇の法則」といった胡散臭いタイトルの本はお勧めできませんが、あとは何を読んでも「一冊」でしょう。
※詳しくはこちらをご覧ください。
勝つためには「棋力を下げる」といった小細工は必要ありません。
棋力を下げるのは自分自身の価値を下げることですから、何のために今まで研鑽を積んできたのかわからなくなります。
「大会」とは普段から地道に積み上げてきた成果を試すための場所です。
普段の勉強を疎かにしているのに強行出場して、挙句の果てに「時間切れ負け」を狙ったりするのでは話になりません。
また「棋力詐称」もしくは「時間切れ負け」や「ハガシ」など、相手のことをとやかく言うのもやめておきましょう。
これらは故意か否かの判別が難しいケースが多いのです。
「あの人はいつも初段で打っているのに級位戦に出ている」
「もう勝つ見込みがないのにずっと打ち続けておかしい」
「今、打ったはずなのに際どいところで打ち直している」
等々、実際には「判定不能」のことはよく起こります。
棋力に関してはそもそも「場所によって違う」ことが周知の事実でしょう。
「囲碁教室」「碁会所」「ネット碁」「日本棋院の認定」すべてバラバラです。
投了に関してもケースバイケースであり、基本的には敗者の「権利」となります。
途中で打ち間違えしない可能性はどこにもありません。
勝ちたければ「時間管理」を自分でしっかり行うべきでしょう。
ハガシは反則と決まっていますが、「癖」になっている人も中にはいます。
あなたが反則を宣言して、その場で審判を呼べば当然ながら勝ちになります。
しかし「癖」とは決して「故意」ではありませんし、人によっては「手が震えている」方もいます。
何でもかんでも「厳正」に対処していては、せっかくのイベントに水を差してしまうでしょう。
「人」がどうのこうのとか「相手」がどうのこうのと言うのはもうやめにしましょう。
人それぞれ「気づく」タイミングも「学び」のタイミングも違うのです。
あなた自身も気づかないことや知らないことはきっとあるはずです。
まずは己自身と向き合って、日々の勉強に勤しみましょう。
そうすることで、あなたの望む結果も自然とついてくることでしょう。
結果を得られなかった方は「優勝する」まで全国の地区予選に参加してみるのも良いかもしれません。
今年負けても来年、来年負けても再来年にまたチャンスが訪れます。
訪れた機会を逃さないためにも、普段の生活の中で囲碁と接する時間を増やしてみてください。
今年こそ宝酒造杯「優勝」を目指して頑張りましょう!