「囲碁における持ち時間の使い方はどうするべきか?」について考察していきます。

囲碁における持ち時間の使い方

早見え、早打ち

今の世の中、時間の使い方は何よりも大切な人生の配分ではないでしょうか?

囲碁を嗜んでいる方は人生の多くを囲碁を打つ時間に費やしています。

それほど面白いゲームであり、また時間のかかるゲームでもあります。

一局の勝負に時間がかかる、上達するのに時間がかかる、棋譜を理解するのにもとにかく時間がかかります。

はたして時間をかけることは良いことなのでしょうか?

答えは「NO」です。

人生100年時代と言われる昨今、時間をかけずにいろんな経験を積めたほうが効率的と言わざるを得ません。

ちょうど「定食屋」に行くか、それとも「バイキング」に行くかといった感じです。

昔は今よりも娯楽が少なく、選べる選択肢は限られていました。

ところがネットの普及により情報が溢れ、それに伴い趣味嗜好に合った娯楽を好きなだけ選べるようになりました。

囲碁の衰退もいわば「相対的なもの」です。

手間のかかる1つのゲームに時間を費やすなら、他の手軽な娯楽をたくさん遊びたいという気持ちは分かります。

囲碁というゲーム自体は変化が膨大でとても攻略しきれるものではありません。

しかし「アマ初段」とか「県代表」といった基準を設ければ、ゴールにたどり着くまでに必要なのは「時間」だけです。

では、時間をかけずに上達するためには、いったいどうすればよいのでしょうか?

その答えは

「碁の質を高める」

そして

「一手一手にかける時間を短くする」

この2点だけになります。

一手一手にいちいち時間をかけていては、いつまで経っても効率よく対局を重ねることはできません。

とはいえ、そもそも一手一手「質の低い」打ち方をしていては、いくら対局を繰り返しても砂漠に水を注ぐようなものでしょう。

囲碁では「早見え、早打ち」がよいと断言できます。

早見えとは「読みが正確である」ことであり、早打ちとは「決断力に優れている」ことに他なりません。

今、日本の棋士と中韓の棋士との間にある決定的な「差」とは「早見え、早打ち」であるか否かなのです。

時間をいくら使ってもよいというのなら、日本と中韓の棋士との差はほとんどなくなります。

ついでに言うとアマチュアでも「2子」は実力差がないと言っても過言ではありません。

2子の実力差が最も分かりやすく現れるのは「早碁」のときでしょう。

早碁では「ポカ」や「見損じ」または「判断ミス」を含めた多くの「失着」がよく出てきます。

実力差がはっきりしているほど、時間による碁の崩れ方は顕著になります。

短い時間で「失着」を打たずに「好手」を打ち続けられるかどうか、まさにこの点こそ「棋力」と言えます。

「時間をかけず」に「質の高い」手を打つのが棋力だとすれば、逆に言うと「時間」と「質」を意識しながら打つことにより上達が早まります。

ただし局面の良し悪しにかかわらず、手を止めて考えることは必要でしょう。

ノータイムで打ち続けていれば、必ず「ポカ」や「見損じ」が出てきてしまいます。

かといって「長考」するのも良くありません。

「下手の考え休むに似たり」という有名なことわざをご存知でしょうか?

囲碁から生まれたこの言葉の意味は

“よい考えも浮かばないのに長く考え込むのは何の役にも立たず、時間の無駄だということ”

とされています。

まさしく言い得て妙であり、悩んでも仕方のないことを見事に表しています。

正直、ある程度読んだらあとの時間は「悩んでいるだけ」です。

長考したからといって決して良い手が浮かび上がってくるわけではありません。

「読みの深さ、正確さ」だけではなく「判断力、決断力の早さ」が勝利のみならず、上達にも求められています。

今の「低い棋力」で長考することにどれだけの意味があるのか、よく考えてみましょう。

それなら「高い棋力」になってから貴重な時間を存分に使ったほうが得策であることは間違いありません。

読まずに「ノータイム」で打たない、悩んでいても仕方ないので「長考」しない。

この2つを意識しながら打つことにより、棋力に見合った適度な質を保つことができるでしょう。

勝負所を見極める

対局中に時間を使うときというのは誰しも同じタイミングになります。

それは「形勢が悪くなったと自覚したとき」でしょう。

指導碁をしているときにありがちなのは「死んでから考える」ことです。

棋力が低い人ほど「形勢判断」や「死活」がよく分かっていません。

もうどうしようもなくなってから「頑張る」というのは、級位者に限らず有段者の碁でもよく見受けられます。

形勢を損ねてからもがくのは構いませんが、時間の使い方としてはあまり得策とは言えないでしょう。

例えば死活の問題を解くとき、正解があるからこそ「長考」する意味があります。

しかし形勢が悪い時というのは、得てして良い手が見つからないものです。

逆に形勢が良い時というのは、相手の態勢が良くありませんからいくらでも良い手が見つかります。

時間の使い方として適切なのは「勝負所」に他なりません。

ここで形勢の良し悪しが決まるといった局面とは、実のところそう多くはないのです。

一局のうち2,3カ所といったところでしょう。

一度形勢を損なってしまうと、立て直すのにだいぶ手数がかかってしまいます。

その上貴重な時間を費やしてしまうのは、上手く時間を管理できていません。

形勢が著しくないときはむしろ開き直って直感的に打つことをお勧めします。

囲碁は着手のテンポが大事な要素になるので、よどみなく打ち回していくのはよいリズムを生みます。

形勢がよいときもまた然りです。

大抵、ポンポン打ち進められるときは何の不安も問題も抱えていないときでしょう。

そうするとやはり時間を使う局面とは「勝負所」となります。

勝負所の見極め方は簡単です。

1つは局面が急に難しくなったとき、もう1つは自ら勝負を決めに行くときです。

この「局面が急に難しくなる」というのは、互先においてそう頻繁に起きることではありません。

誰しも「分かる範囲内」で打ちたいと思うものですから、積極的に盤面を複雑化させようとする人はいません。

しかし期せずして、複雑な戦いに突入することはよくあります。

「よくある」とはいっても、一局のうち明確な勝負所というのは「2,3カ所」程度でしょう。

置き碁であれば、置き石の数に応じて上手が勝負しなければならないポイントが増えます。

9子局なら「上下左右の隅と辺+中央」のすべてをどうにかしなければ、上手に勝機はありません。

もちろん「大石を取る」なんて大技は要りませんが、少なくとも「置き石の効力を消す」くらいの芸当は必要でしょう。

当然ながら、置き碁で時間をかけなければならないのは「下手」のほうです。

時間が短ければ、短いほど「上手有利」になることは間違いありません。

逆に時間を無尽蔵に使うことが「置き碁必勝法」になり得ます。

置き碁で上手に勝てない方は、ぜひ「時間をかけて」打ってみてください。

これは間違いなく上手が「一番嫌がる」方法です。

上手からしてみれば、ノータイムでポンポン打ってくる下手など「いいカモ」でしかありません。

ポカや見損じによる失着は目に見えていますから、戦いを仕掛けやすくいくらでもカウンターを決められます。

上手にとって最も厄介な下手とは「勝負所で手が止まる」人に他なりません。

大多数の人が「決着がついてから手が止まる」ものです。

こちらの仕掛けを冷静に対処されると、上手としてはチャンスが少なくなり次第に焦り始めます。

高段者以上の上手になると「死活(石)」だけではなく「形勢判断(地)」でも揺さぶってきますから、冷静に対処するのは言うほど簡単ではありません。

とはいえ時間を上手く使うことで、決定的なダメージを負うことなく終局を迎えられるでしょう。

とにかく「おかしくなってから考えるのでは遅い」と肝に銘じておきましょう。

形勢が良い時というのは、いわば「簡単な詰碁」を解くようなものです。

形勢が悪い時というのは、まさに「難しい詰碁」を解くようなものなのです。

どちらがより時間がかかるのかは言うまでもありません。

勝負所というのは「簡単な詰碁」にできるか、それとも「難しい詰碁」になるかといった瀬戸際になります。

難しい詰碁を解き続けなければならないという「苦行」に耐える愚を犯さないためにも、勝負所を見極める目を養いましょう。

打ち慣れること

囲碁には「布石」「中盤」「ヨセ」があります。

それぞれどのように時間を使い分けていくのか説明していきましょう。

普段、碁会所や囲碁教室または囲碁サークルなどで打つときに「切れ負け」を気にして打っている人はいません。

打っている場所が閉まる時間になれば、しょうがないので「無勝負」や「判定」にすることはあります。

大会とは違い「切れ負け」を気にせずに打てるのは素晴らしいことですが、それでも一局の「時間管理」はしっかりしたほうがよいでしょう。

一局打ちきるのに「1時間」総手数が「200手」かかるとして「1手あたりの時間」を計算してみましょう。

60分を200で割ると1手あたり「0.3分」つまり「1手あたり18秒」かかる計算となります。

この「1手18秒」というのは、長くもあり短くもあります。

相手の手番のとき「18秒」待たなければならないと想像してみてください。

人によっては「早く打たないかな」と思ってしまうほど長く感じてしまいます。

ちょうどテレビのCMのようなものですからね。

しかし囲碁の時間管理は「1手何秒」といった単純なものではありません。

シチョウを取るのに1手ごとに時間かけて追いかける人はいないでしょう。

囲碁には「ツケノビ」「ツケ切り」「二線のハネツギ」「3つ這ったら一間トビ」のように「一連の読み筋」があります。

「1手」ではなく「読み筋」単位で時間を管理することが大切です。

この「読み筋」というのが、実は「布石」「中盤」「ヨセ」によってそれぞれ違います。

布石なら「定石」を1つの読み筋として考えることになります。

序盤はカカリ、ヒラキのような「2手」で済む定石から「大型定石」まで、どの定石を「選択するのか」といったことに時間をかけます。

1つの目安として、持ち時間40分の大会における時間の使い方は次の通りです。

“ペース配分は「布石10分」「中盤15分」「ヨセ10分」「予備5分」としています”

布石はおよそ「20手~50手まで」と考えてよいでしょう。

そのうち自分の手番が半分ですから、「10手~25手」打つのに「10分」の時間を使うというわけです。

つまり「1手あたり24秒~1分」かける計算になります。

石の方向を決めたり、一局の方針を固めるのに使う時間としては妥当ではないでしょうか?

それこそ序盤に形勢を損なってしまうのは、中盤での苦戦を余儀なくされます。

その「中盤」というのは、碁の内容によって手数が大きく変動します。

総手数200手の場合、ヨセを「50手~100手」とすると中盤は「50手~130手」となります。

「50手~130手」打つのに「15分」かけるなら、「1手あたり約7秒~18秒」の間で打つことになります。

先ほども言ったように「読み筋」で一括りにすれば、それほど難しい時間配分ではありません。

中盤戦は「3手読み」を基本として「20秒~1分」かけて打てばよいのです。

ヨセは「50手~100手」打つのに「10分」ですから、「1手あたり6秒~12秒」かけて打ちます。

ヨセは初級者が一番時間を使う分野ですが、要は「慣れ」だけです。

慣れてしまえば、1手あたり10秒もかけて手を読むことはありません。

その代り「目算」に時間を使います。

ヨセは1手あたりの時間が問題なのではなく、あくまでも目算にどれくらいの時間を割けるのかが重要なのです。

普段の対局では「予備」としている時間を「勝負所」に使いましょう。

勝負所はせいぜい2,3カ所ですから、5分要するなら「1カ所あたり2,3分弱」といったところでしょう。

もちろんこの時間配分は「持ち時間40分」の場合であり、対局ではもう少し早く打つことが求められます。

あまりにも長考するのは、打つこと自体を敬遠されることになりかねません。

長考しないよう、されど質の良い碁を打ちたければ「打ち慣れる」しかありません。

碁会所で毎日打っているような人たちはおのずと良い感じの時間配分になっています。

まず打たないことには「時間の使い方」も「勝負所の見極め方」も上手くなりません。

もう十分に対局を重ねている方は「心の中で時を刻みながら」打ってみましょう。

そのとき最低でも「3つ数えてから」打つように心がけるとよいでしょう。

そうすることで「ポカ」や「見損じ」を減らし、なおかつ「1手にどれくらい時間をかけているのか?」を体感しながら打つことができます。

大切なのは「実践すること」です。

頭で理解するだけではなく、実際にやってみることでより身に付きやすくなります。