「囲碁における定石とは何か?」について考察していきます。

囲碁における定石

互角の幻想

あなたは定石についてどれくらい理解していますか?

定石とは

“部分的に双方が最善を尽くした打ち方、一連の手順”

と解釈されています。

これは正しい表現なのですが、よく「定石は部分的に互角」と言われることがあります。

実はここの解釈を誤解している方が非常に多いのです。

定石は「部分的に互角」ではありません。

最善を尽くしてなお、出来上がり図には必ず「部分的な優劣」がつきます。

よくよく考えてみれば、こんなことは当たり前です。

なぜなら、どちらか一方が先に拠点を占めているからです。

「星の定石」の場合、先に隅の要点を押さえている側が有利になるに決まっています。

むしろ定石とは「大局的に互角」であると解釈するのが自然でしょう。

例えば、黒の二連星vs白の二連星を想定してみます。

黒はカカリ+スベリ+二間ビラキを打ち、対して白はケイマ受け+三々に打ちます。

元々白が星に打っていますから、石数は3対3となっています。

ここで大切なのは「手割り」の考え方です。

黒のカカリと白のケイマ受けは「同価値」とみなします。

他の2手を比較すると白が「星と三々」を打っているのに対して、黒は「スベリと二間ビラキ」を打っています。

隅の要点を2つも押さえている白に軍配が上がるのは明らかでしょう。

理解しづらい方はまた別の「手割り」を想定してみましょう。

白の星と黒のスベリを外すとより分かりやすいはずです。

つまり白の三々に黒が二間ガカリして、さらにお互い二間ビラキした図になります。

同じ二間ビラキとはいえ、隅に近い白のほうに軍配が上がります。

そこから白の星、黒のスベリを加えると元の定石に戻ります。

星(4線)とスベリ(2線)を比べたとき、4線の石に価値を見い出すのは布石の基本です。

結局、黒がカカリに先着したところで、先に待ち構えている白よりも優位に立てるはずがありません。

同じ石数を使っても、要点を占めている白が有利になるのは自明でしょう。

この理論をよく分かっていないと「定石とは何か?」を理解することはできません。

黒が5手目でカカリを打ったら、白は先手のうえ白有利のワカレになります。

ただし、今度は白が黒の星へカカリを打たなくてはなりません。

すると今度は黒が先手のうえ、黒有利のワカレとなります。

こうして部分的には優劣がつくにせよ、全局的に見れば「互角」と言えるのです。

この理論はどの定石にも当てはまります。

そして形勢判断をする上で大切な考え方になっています。

勿論、

“部分的に双方が最善を尽くした打ち方、一連の手順”

であることが前提条件です。

今流行りの「単三々入り」など先手・後手が入れ替わりますから、より正確に部分的な形の判断を求められます。

すなわち黒の待ち構える星に白が「三々入り」した場合、白後手なら「黒有利」であり、白先手なら「黒さらに有利」となります。

他人の隅(星)にちょっかい出しておいて、さらに先手まで取ろうというのですから白の不利は当然でしょう。

盤上では必ずどちらか一方の石が待ち構えています。

あとからツケたり、カカッたりするのは「不利になる」と覚えておきましょう。

互角という言葉に惑わされず、しっかり理論立てて判断していくことが定石を理解するためには必要不可欠です。

最善の追求

定石を使いこなす上で大切なのは「最善」を知ることです。

そもそも囲碁のような果てしない変化をもたらすゲームにおいて、最善を突き詰めることができるのでしょうか?

答えはYESです。

ただし序盤早々のごく限られた手数のみと言ってよいでしょう。

囲碁は「無限の分野」と「有限の分野」に分かれています。

囲碁における無限の分野とは「地」のことであり、有限の分野とは「石」のことに他なりません。

部分的な「死活」や「手筋」には正解が用意されています。

つまり定石とは言い換えれば「部分的な死活や手筋を駆使したワカレ」というわけです。

定石が今と昔で違うのは「地」の解釈が時代ごとに異なるためでしょう。

ここで言う地とは「厚み」も含まれています。

厚みは最終的に実利として回収しなくてはいけませんから、地も厚みも同じようなものです。

囲碁における厚みとは?

囲碁における地とは?

※詳しくはこちらをご覧ください。

囲碁における最善とは「有限の分野」の中にあります。

序盤の立ち上がりの段階で、まだ大局的な判断がつかない時こそ定石の出番です。

序盤は次の2つに分けることできます。

・布石「無限の分野」

・定石「有限の分野」

すなわち「地」と「石」です。

布石が進むと定石の価値観が「無限の分野」に引っ張られます。

いわゆる「定石の方向」または「石の方向」と言われています。

たとえ部分的に最善を尽くしても、大局的な方向を見誤ってはいけません。

大局的な価値観にとらわれていては部分的な最善を突き詰めることが難しくなります。

そこで序盤は布石を中心に組み立てていくのではなく、定石を中心とした石運びをしていきます。

それなら定石の力を余すところなく発揮できます。

もし布石を中心に組み立てていくのなら、定石(最善)という考え方をいったん捨てるべきでしょう。

他の隅との関連や辺や中央への展開を考えたとき、部分にこだわるのは良くありません。

全局的なバランスが崩れてしまい、俗に言う「定石覚えて2子弱くなり」となってしまいます。

言ってみれば、定石は「布石の前」に打つものです。

すなわち、こういう手順です。

「序盤」

・定石(有限の分野)

・布石(無限の分野)

「中盤」

・戦い(有限の分野)

・形勢判断(無限の分野)

「終盤」

・ヨセ(有限の分野)

・目算(無限の分野)

形勢判断や目算は「どれくらい勝っているか」によって打ち方が変わります。

戦い方やヨセ方は「石の形」を見て判断するので、部分的な打ち方は決まっています。

「布石の中の定石」

「形勢判断の中の戦い」

「目算の中のヨセ」

このように大きいものの中に入ってしまうと最善を追求するのは極めて困難でしょう。

「定石を打った上で布石を組み立てる」

「戦いがひと段落してから形勢判断をする」

「ヨセてから目算する」

この順番のほうが迷いなく、最善を追求できます。

最善とは「死活」及び「手筋」を駆使することですから、あとは各々の勉強次第となります。

逆に言えば、読みに自信のない方は「無限の分野」でお茶を濁せばよいのです。

つまり「定石のない布石」を打ち、さらに「戦いを避けて次善策」に甘んじ、そして「目算しながら足りるようにヨセ」ていきます。

無限の分野は「正確に判断するのが難しい」ため、妥協しながら打ってもよい勝負になります。

とはいえ、定石を知るにはそれではいけません。

定石とは「石」において一切妥協しない打ち方であり、死活・手筋を駆使した最善の追求に他ならないのです。

囲碁の攻略法

定石はひとえにプロの手を借りているのと変わりません。

初級者~中級者においては手順の短い定石しか使っていませんが、それでは勿体ないというものです。

なるべく手順の長い大型定石を使うことにより、プロの御業(みわざ)をそのまま拝借することが可能となります。

この際、定石外れは怖くありません。

定石を外れて悪くなるのは相手のはずなので、堂々としていればよいのです。

なぜ定石を覚えたほうがよいのか?

※興味のある方はこちらも合わせてご覧ください。

定石を覚えるのが大変という方はまったくの的外れです。

正解のない囲碁において、模範的な解答を得られるというのはメリット以外の何ものでもないでしょう。

そして互先における序盤のアドバンテージは勝敗に直結します。

同じ正解でも詰碁の解答を覚えるより、定石を覚えるほうがはるかに実戦的で活用しやすいでしょう。

相撲に例えるなら詰碁が「決まり手」なのに対して、定石は「立ち合い」のようなものです。

最初にリードを奪う大切さは囲碁に限らず、あらゆる勝負事に共通しています。

誰しも「必勝法」を知りたがっているにもかかわらず、どうして定石を覚えようとしないのでしょうか?

定石のよいところは「定石後」の打ち方もある程度、決まっていることです。

特に隅の定石は「定石後」の変化の一端に過ぎません。

1つの定石を覚えれば、その後の打ち方も含めて実戦の中で反復できます。

仮に「単三々入り」の定石を覚えたとしましょう。

星に即三々入りするわけですから、打てない可能性はほぼありません。

勿論、いくつか変化の余地はありますが、それも徐々に覚えていけばよいだけです。

大切なのは「外側の厚み」と「内側の死活」が毎回、同じという点でしょう。

どのようにアプローチしていけばよいのか、最善を模索しながら自分自身で「定石後の定石」を探していきます。

定石後の打ち方に悩んだときは「棋譜並べ」をお勧めします。

手数が進むにつれて定石から「布石」へと変化していきますから、決まりきった打ち方はなくなります。

他の隅との連携、辺や中央への展開を考えると千差万別ですが、それでも部分的なアプローチに大きな変化はありません。

定石のみならず、囲碁を打つ上で大切なのは「パターン認識」です。

囲碁におけるパターンとは「筋・形」のことに他なりません。

いくら囲碁の変化が膨大とはいえ、何の手掛かりもなしに打てるはずがないでしょう。

囲碁の変化はあくまでも「全局的に見て、同じ局面はない」というものです。

上達すればするほど、部分的には「見たことある形」だらけになります。

囲碁上達とは「パターンを覚える」だけの話です。

意識していなくても、勝ち負けを通じて「勝ちパターン」「負けパターン」を覚えるからこそ上達します。

本当に囲碁を強くなりたい気持ちがあるなら、定石を覚えてしまうのが一番手っ取り早いでしょう。

それから定石後の変化、最後の死活まで一通り網羅してしまえばよいのです。

ここをめんどくさがっていたら、いつまで経っても非効率な上達しかできません。

定石とは「序盤における囲碁の攻略法」に他なりません。

定石を覚えないといけないのではなく、是非とも覚えたいものが定石なのです。

あなたが定石の研究をし始めたとき、本格的に囲碁の世界を知る第一歩となるでしょう。