「囲碁における棋理とは何か?」について考察していきます。

囲碁における棋理

棋理の本質

棋理とは「囲碁の理論」を指します。

囲碁とはどういうものかを表す言葉ですが、盤上で棋理に沿って打つのは難しいでしょう。

囲碁の部分的なテクニックは数多くあり、その中から「理論」を組み立てるのは並大抵ではありません。

囲碁の代表的な理論とは次のようなものです。

・地を囲う効率は盤端(特に隅)がよい

・1線と2線は地を囲う効率が悪い

・石を取ると基本的に有利になる

・石を取るのは簡単ではない

実戦ではこれらを意識しながら打っていくことになります。

勿論、この他にも「格言」や「考え方」はいっぱいあります。

しかし上記の4つだけでも、ある程度の基本方針を立てられます。

すなわち「1・2線を避けて、盤端に近い3・4線から打ち始める」というわけです。

また「石を取りたいけど一筋縄ではいかないので、石取りは脅し(攻め)に使う」と考えます。

このように1つの理論だけではなく、複数の理論を合わせて考えていくのが重要でしょう。

囲碁は状況がめまぐるしく変化しますから、必要に応じて理論の優先順位を変えていく必要があります。

今は「地の理論」なのか、それとも「石の理論」なのかといった具合です。

この切り替えが上手くないと一本調子の単純な碁になりかねません。

上達が止まっている方は毎回「同じ理論」で打っている可能性が高いでしょう。

棋力に適した新しい理論を取り入れながら、それを局面に応じて使い分けるのが上達への近道になります。

大切なのは1つの理論を頭に落とし込むのに「何十局」もの対局をこなすことです。

まず「四方を囲めば取れる」という理論(ルール)を学んだら、9路盤(狭いフィールド)で試行錯誤を繰り返します。

つまり「石取りゲーム」から始めるというわけです。

それから次に「最後に地を多く囲ったほうの勝ち」という理論(勝敗条件)を学びます。

すると地を囲うには石を取ったほうが有利という理論と同時に、場合によっては「石を捨てて打つ」という理論(捨て石)が効果的だと分かります。

無論、その理論を頭に落とし込むには何十局という対局数が欠かせません。

ルールから始まり、そこから1つ1つ理論を積み上げていくことにより、次第に難解な囲碁の世界を解き明かせるようになります。

1つだけ注意しなくてはならないのは、理論だけ学んでも意味がないという事実です。

囲碁で最も大切な能力は「状況判断(形勢判断)」に他なりません。

「今はどの理論が求められているのか?」それを知らずして理論の適切な運用などできません。

例えばヨセの段階で「盤端から離れた中央に打つか、それとも1・2線に打つか」といった判断があります。

これは「その時の状況による」としか言えません。

中央が地模様ならそちらを優先し、いわゆる「マグサ場」であれば1・2線を優先します。

ヨセの理論は「先手ヨセ・後手ヨセ・逆ヨセ・両先手・両後手」という基本理念から成り立っています。

しかしヨセにおける「先手」は果たして本当に「利くのかどうか?」といった問題があります。

その判断は「死活」の理論や「フリカワリ」の理論と合わせて考えなくてはいけません。

とにかく「総合的な判断力」によって盤上を見渡していくのが「棋理の本質」と言えるでしょう。

上達への第一歩

棋理はそれぞれの棋力に合ったものを習得していきます。

級位者なら「石取りの理論」を学び、有段者なら「地を囲う理論」を学ぶべきです。

「石取り」の技術がいまいちであれば、上手く「地を囲う」のは難しいでしょう。

趙治勲先生曰く「初段になるまでは9路盤で十分」とのことです。

「石がぶつかったらよく分かりません」という方はもう一度9路盤に戻りましょう。

まずは部分戦、接触戦の理論を学び、それから大局観、形勢判断の理論を学んでも遅くありません。

9路盤のすゝめ

COSUMIと囲碁クエストのすゝめ

※興味のある方はこちらも合わせてご覧ください。

囲碁をよく理解できないのは段階に応じた学び方をしていないからに他なりません。

仮に「シチョウ」について学んだあと、「アタリアタリはヘボ碁の見本」なんて格言を学んでも辻褄が合いません。

それもそのはずで、シチョウ及び手筋は「100パーセント取れること前提」だからです。

シチョウ・ゲタ・両アタリ・ウッテガエシ・オイオトシ・グルグル回しなど、アタリをかけてよいのは「石が取れるとき」がほとんどでしょう。

ただし例外として「裂かれ形の筋」「捨て石の筋」「愚形に導く筋」があります。

「筋」とはアタリのことであり、何か明確な目的がなければアタリにしてはいけません。

アタリにするのは「石取り」の理論、アタリにしないのは「地を囲う」理論になります。

「シチョウ」と「アタリアタリはヘボ碁の見本」とは前提にしている理論がそもそも違います。

このような使い分けができず、ごちゃ混ぜになっている方を多く見かけます。

なぜそのような事態に陥るのでしょうか?

理由は簡単です。

それは「理論未修得」のまま、次のステップに進もうとするからです。

つまり「分かったつもり」「知ったかぶり」になっているからに他なりません。

教室に通っている方はその傾向が特に顕著になっています。

こちらとしては同じ授業をするわけにはいかないので、あの手この手を使ってあらゆるアプローチをしながら理論を伝えます。

しかし週1の授業の内容を理解しようにも、そう簡単にはいきません。

結果として同じテーマ(理論)を扱うことになりますが、それでも1ヶ月が限度でしょう。

次の月には別のテーマ(理論)に移りますから、必然的に消化不良のまま話がどんどん進んでいきます。

しかも厄介なのはその事実を学んでいる本人はまったく気づいていないのです。

同じ内容をやろうものなら「先生、それ前にやりました」と言われかねません。

実際に3年前の授業の内容を覚えていて、指摘してきた生徒さんもいます。

こちらとしては教材はもとより、言い方や伝え方を変えながら毎回授業に臨むしかないでしょう。

一番やりやすいのは「棋譜解説」です。

棋譜解説なら「これは前にも出てきましたね」と言えます。

はっきりしているのは、知識に対して圧倒的に「実戦不足」ということです。

逆に碁会所やネット碁では「実戦過多」となり、「勉強不足」が見て取れます。

学び(理論)と実践のバランスは難しいところですが、少なくとも「検討(復習)」は必須でしょう。

できているか、いないかをしっかりと認識することが上達への第一歩となります。

理論の構築

プロ棋士・インストラクターを始め、上手に対する質問として「ここはどう打てばよいのですか?」というセリフがあります。

これは聞き方がよくありませんし、その場限りの知恵にしかなりません。

大切なのは「どう考えるのか?」を知ることです。

すなわち「どの理論を使うのか?」が重要になります。

種石を取るのが大きい局面では「石取りの理論」を使います。

捨て石するのが大きい局面では「地を囲う理論」を使います。

背景にある一番大きな理論がこの2つであると言ってよいでしょう。

その他に「布石・中盤・ヨセの理論」や「黒番・白番」の理論など、大きなものから徐々に細かくなっていきます。

最終的に打つべき1つの着手に至るわけですが、それでも候補手が1つに絞りきれるとは限りません。

なるべく優先順位を決めて、それに沿った打ち方をしていくのが理想的ではあります。

級位者の棋譜を解説します!【二局目】

初段の棋譜を解説します!【五局目】

有段者の棋譜を解説します!【九局目】

※詳しくはこちらをご覧ください。

上記の棋譜解説では「A,B,Cの理論」と「勝手読み」について説明しています。

ひと言で表すなら「自分で優先順位を決めて打ちましょう」というだけです。

いろいろな候補手にそれぞれ優先順位を付けることにより、今はどの場所(理論)が大きいのか判断しやすくなります。

上手からただ「どこに打つのか?」を聞いたところで、まったくと言ってよいほど意味がありません。

背景とする考え方、理論が見えないまま着手だけ示されても仕方ないでしょう。

もし理論を聞いてもチンプンカンプンなら、それはまだ学ぶには早いと言う他ありません。

少なくとも「答えを聞いたら分かる」というのが学びを得るための最低ラインになります。

これは詰碁を解くときも同じことが言えます。

詰碁には主に3種類の解き方(理論)しかありません。

・打ち欠きの筋(放り込み、二目にして打ち欠く)

・中手(3・4・5目中手、花六)

・ダメヅマリの筋(押す手なし、ウッテガエシ、カケ眼)

これらの解き方(理論)を知らなくては、正解に辿り着けません。

また1つの理論だけではなく、大抵は「複合的な理論」の問題になっています。

余談ですが、死活から詰碁に至るまで「スペースを狭める」ことも実戦では重要になります。

詰碁はあくまでも「決まり手」でしかありませんから、そこまで持っていく技術はまた別です。

例えば「死はハネにあり」とは死活の理論になります。

十分にスペースを奪ってから「2-一の急所」に置くのは詰碁の理論でしょう。

※2-一の急所に置いたのち、上記(3つ)のいずれかによって決まる。

棋理を把握するときは大きいものから徐々に狭めていく方法と小さいものから理解していく方法の2種類があります。

「地を囲う理論」においては大きい枠組みから、だんだん狭めていくのがよい方法です。

「石取りの理論」においては小さいものから理解していくほうが分かりやすいでしょう。

布石の打ち方に関しては「隅・辺・中央」や「先手・後手」または「石の強弱」など、必要に応じて考え方を狭めていきます。

一方で死活に関しては「打ち欠き・中手・ダメヅマリ」を基にして「そこに至るにはどうすればよいのか?」と考えます。

大枠からアプローチしていくのか、決まり手からアプローチしていくのか状況によって判断しましょう。

その判断の仕方を含めて、上手から学ぶべきなのです。

勿論、学びっぱなしではなく実戦と検討を繰り返しましょう。

「実戦と検討」すなわち「実践と検証」こそ、棋理を構築していくために必要不可欠な勉強法となります。

毎局、焦らずじっくり考えて「囲碁の理論」を学んでいけたら良いですね。