「なぜ定石を覚えたほうがよいのか?」について考察していきます。

定石を覚えたほうがよいのか

研究の成果

「定石覚えて2子弱くなり」の格言通り、やみくもに定石を覚えたところで勝ちに直結することはありません。

よく「定石は覚えて忘れましょう!」という言葉を耳にします。

暗記をすることが目的ではなく、定石を覚えることで「形」や「手筋」を頭に落とし込むのが目的という意味です。

しかし今回は「定石を暗記しましょう!」と提案いたします。

なぜなら囲碁は「上達の成果」が見えにくく、モチベーションを維持するのが非常に難しいからです。

有段者には「定石博士」のような方が多くいます。

有段者になると上達するのも一苦労であり、学びの一環として難しい定石を覚えようとします。

上達するために何をやったらよいのか迷った挙句「定石をマスターしよう!」という気になるのです。

有段の壁を難なく超えてしまった高段者に限って、あまり定石に詳しくありません。

すると有段者の方が研究してきた定石にまんまと嵌まってしまうことがよく起こります。

上手を「嵌める」ような形で優勢へと導ければ、「してやったり」とほくそ笑むのではないでしょうか。

一度でも味を占めてしまったら、もはや後戻りはできません。

いわゆる「嵌め手」を研究するようなモチベーションで定石の勉強に励みます。

実はこういった動機こそ、強くなる「兆候」ではないかと考えています。

相手を嵌めようとするなど、いかにも「卑怯」に映るかもしれません。

しかし、それはまったくのお門違いです。

そもそも囲碁の対局は「試し合い」によって成り立っています。

いろんな手法を駆使しながら「どういった結果になるか」といった検証をお互いに営々と繰り返しています。

「こういう打ち方もあるのかな?」という姿勢こそ、囲碁における「王道」と言ってよいでしょう。

仮に失敗したら形勢を損じてしまう打ち方でも、通用するうちは使っておくべきでしょう。

日々の研究によって得た知識がたとえ「嵌め手」の類であっても、立派な作戦の1つです。

今でこそ隆盛を極める「中・韓の碁」を遡れば、「試し合い」による試行錯誤の連続であったことがわかります。

日本だと「棋理に反する」といって候補から外すような打ち方を果敢に研究していました。

「トライ&エラー」を日々繰り返していった結果、日本の棋士が想像もしなかった「新定石」が次々と生み出されたのです。

あなたがいくら研究を重ねたところで「新しい打ち方」を見つけ出すのは難しいかもしれません。

しかし定石に基づいて勉強することは決して無駄なことではありません。

「定石通りに行かない」ケースに遭遇したとき、次の2つのパターンが考えられます。

1つは相手の定石外れによって「あなたの形勢が良くなる」パターンです。

もう1つはどういうわけか「あなたの形勢が悪くなる」パターンです。

形勢が好転すれば良し、そうでなければ「なぜ上手くいかないのか?」をさらに追求していきます。

そうやって実践と検証を繰り返しているうちに本当の意味で「定石をマスター」していることでしょう。

そのための第一歩として「定石を暗記しましょう!」と提案させていただくわけです。

いくつ暗記すればよいのか?

定石は1つ覚えただけでは使い物になりません。

「星」の定石であれば、最低でも20個は覚えておきたいところです。

「小目」「高目」「目外し」「三々」など、隅の位置によって定石は数知れず存在します。

「隅は無数の変化があるから覚えても仕方ないよね?」という意見はごもっともです。

しかし定石を「100個知っている人」と「20個しか知らない人」ではどちらに分がありますか?

答えは簡単です。

「100個知っている」ほうが良いに決まっています。

定石とはプロ棋士の長年の研鑽によって生み出されたものですから、プロの手を借りていると言っても過言ではありません。

「定石通りにならなかった場合は?」どうすればよいのでしょうか。

「定石を覚える」とは枝分かれの変化も含めて、自信を持って打てるようになって初めて「覚えた」と言えるのです。

ですから「丸暗記」した状態は「うろ覚え」と何ら変わりありません。

その状態から何回でも使ってみて、定石を頭に刷り込んでいくのです。

定石を「100個」覚えると聞けば、誰しも気後れしてしまいます。

とはいえ、要らぬ心配はご無用です。

初心者でもない限り、すでにあなたは「数十個」の定石を知っているはずでしょう。

「三々定石」1つ取っても類似形は何個もあります。

星のカカリに対して

「一間バサミ」「二間バサミ」「三間バサミ」×「高いハサミ」「低いハサミ」

6種類の「ハサミ」には「三々入り」が簡明です。

カカリの一子を遮る形の定石ならどれも変化は同一になります。

つまり「カカリから三々入りする定石」を1つ知っていれば、6種類のハサミに対応可能というわけです。

こうやって類似形を掛け算していくとあっという間に「100個」の定石を覚えたことになります。

有段者の方だけではなく、級位者の方も今まで学んだ定石を数えてみましょう。

あなた自身が思っているよりもはるかに多くの定石を知っているはずです。

もちろん類似形とはいっても「似て非なる」ものがあることは承知しておきましょう。

特に「小目」の場合はハサミによって対処の仕方が異なります。

まずはそれぞれの変化を「覚える」ことで、今度は「挟み方によって何が変わるのか?」といったことが自ずと分かってきます。

大切なことは「何に基づいて」考えるのかです。

「定石」とはプロ棋士の日々の研鑽によって生み出された「正解手順」と言ってもよいでしょう。

「正解」に基づいて、枝葉の変化も追っていきます。

「定石外れ」には必ず咎める「正着」があると思ってください。

実際には「咎める」まで行かず「少しだけ良くなる」場合のほうが多いのですが、細かいことは気にせず打ちましょう。

暗中模索ではなく「正解」という正義に基づいて、考える「礎」を築いていきます。

布石の接触戦において一からすべて自分自身の頭で考えるのは非常に骨が折れます。

「定石」を布石の軸としてしまえば、より布石を研究しやすくなるでしょう。

そのためには数多くの定石を「暗記」して「実践する」ことが必須となります。

「私は暗記が苦手なんだよね」という方はどうかご安心ください。

暗記するのは「根性」ではなく、立派な「テクニック」です。

暗記の仕方さえ間違えなければ、自然と多くの定石をマスターできることでしょう。

幹から枝葉へ

勉強にコツがあるのと同じように「暗記」にも当然ながら「やり方」があります。

とても簡単なことです。

定石を1つ覚えて、その覚えた定石を基にして次々と類似形を覚えていけば良いのです。

ちょうど大木を育てるように、きちんと「幹」が成長するのを待って枝葉を足していくイメージです。

「星」の定石であれば、幹となるのは「三々」になります。

星の定石変化に「三々」は絶対に欠かすことのできない要点です。

まずはシンプルな「単三々入り」から覚えてみましょう。

AI以降の定石ではなく、旧定石で構いません。

とりあえず手順をマスターしたら今度は実践してみてください。

もう間違えようがないと判断したら、今度は「枝」となる部分を覚えていきます。

すなわち「カカリからの三々入り」や「シマリに対する三々入り」などです。

「カカリからの三々入り」は2パターンあります。

・カカリに対して何かしら「ハサミ」を打ってきたケース

・カカリに対して「小ゲイマ」あるいは「一間」に受けたケース

どちらもよくある形であり、三々入り定石の「枝」と称するに相応しい変化でしょう。

これらの「枝」を学んでいくと「ある共通点」に気づきます。

それはいずれにしても「二線のハネツギ」を利かすことです。

一番最初の「幹」となる旧定石と比べても「二線のハネツギ」を打っていることがわかります。

三々に入って隅を生きるのにどうしても「二線のハネツギ」は死活の関係で欠かせません。

しかし細かいことを無理に覚えることはありません。

「星」の定石は「三々」が要点となっており、「三々入り定石」には「二線のハネツギ」が必須になります。

キーワードは「三々入り」と「二線のハネツギ」です。

定石ごとの共通点を見つけてしまえば、あとは「葉」の部分をじっくり詰めていくだけになります。

「シマリに対する三々入り」も2パターンあります。

・星の「小ゲイマ」ジマリに対する三々入りのケース

・星の「一間」ジマリに対する三々入りのケース

どちらの場合もやはり「二線のハネツギ」が欠かせません。

「小ゲイマジマリ」の場合では、結局のところ「コウ」になります。

「一間ジマリ」の場合では、周囲の状況にもよりますが「無条件生き」になります。

一間ジマリでは三々入りした後「這わずに」「コスミ」を打つという特殊なケースになりますが、どのみち「二線のハネツギ」を打つことに変わりありません。

このように定石ごとに「幹」「枝」「葉」と分類して、「幹」と「枝」の共通点を探してみましょう。

共通点さえ見つけてしまえば、あとはすべて「類似形」として記憶しやすくなります。

これは定石を覚えることだけではなく、囲碁を学ぶ上でとても大切なテクニックなのです。

棋力が低い人ほど「類似形」を見つけ出すことができず、毎回「違う形」に頭を悩ませます。

棋力が高い人ほど「類似形」を見つけ出すのが上手く、毎回「同じような形」として認識できています。

囲碁は一種の「連想ゲーム」であり、そこから「推理するゲーム」でもあります。

成功体験、あるいは失敗体験に基づいて、「良い形」や「悪い形」を自然と学習していきます。

物覚えの悪い方は頭の中に「データ」を持っていません。

それ故に打つたびに「同じような形」でつまづいているのです。

そのような「悪癖」を直すには一定の「指針」を持たなくてはなりません。

その指針となるのが「定石」なのです。

「名人に定石なし」の格言通り、形を習熟した者に定石など必要ありません。

逆に言えば「形」や「手筋」を今一つ習熟できていない方には「定石」の勉強は必要不可欠と言えるでしょう。

あとは「やるか」「やらないか」だけです。

あなた自身の確かな指標として定石を覚えることは決してマイナスにはならないでしょう。

むしろ確かな指標を得ることで「自信」を持って打てるようになります。

ぜひ騙されたと思って定石をたくさん暗記してみてください。

その上で繰り返し実践していけば、きっとあなたの強力な武器となることでしょう。

「定石覚えて2子強くなり」の新格言が生まれることを期待しています!